——逆にSNSを見ると「ケア」や「ネガティブ」を肯定する風潮が増えている印象があります。
そういう世間の極端な動きに、最近うんざりしているんですよね。開き直ってハッスルしようぜみたいな2010年代的ムードもくたびれるし、逆に気休めのようにチルとかケアとか言ってるだけの風潮も、一見優しげでいながら当人にとっては生殺しになる場合もあるじゃないですか。だからこそ、どちらかに偏らない、中庸のちょうどいい状態を探っていきたい。中庸こそが現代のカウンターカルチャーだと思います。
本当につまらないことを言うと、僕は周囲の人や、リスナーみんなが幸せになって欲しいと本気で思ってるんですよ。普通に、それ以外ないなっていう。でも、幸せという言葉のトーンが持つあたたかみというか、ほっこりした感じがめちゃくちゃ嫌で。だから幸せという概念をどうにか言い換えて、見た目は違うけれど本質的には同じ内容を伝えられるよう、試行錯誤したいですね。
——TaiTanさんがこれからやりたいこと、興味を持っていることは。
「THE DAY」の水というテーマもそうですが、最近は、日常に近いものに興味が移ってきている感じがします。カマシみたいな空中戦をズドーンってやるより、もっと人生に直接的に介入するようなモノをつくりたいなと思うようになりましたね。
僕の感覚だと『奇奇怪怪』(Podcast )を始めたコロナ禍の2020年代前半より、全てがアテンションで埋め尽くされた現在の方が、世の中がバグっている。だからこそ、分かりやすい成功のイメージや、憧れのほっこり暮らし像みたいなものに左右されない、マイクロなモーメントに湧き上がる自発的な喜びにこそ目を向けたい。言い換えれば「自分なりに道楽的に生きる」感覚の肯定にこそ新しい鉱脈があるように思います。それはただの概念的な意味だけじゃなく、ビジネス的な意味でも、可能性を感じてます。
例えば秋のはじまりに窓を開けて、ひと仕事終えた時の感覚とか。もうそのレベルの。誰にも奪えない自分だけがわかる一瞬のしょぼい幸福の積み重ねが、意外と生きる糧になっていたりするじゃないですか。そういう、大きな意味での幸福からこぼれ落ちるものを掴んで、どのように生活のイニシアチブを自分で守りながら道楽的に過ごせるか。それを実践していきたいし、そのハウツーをどうやったらみんなと面白おかしく共有したり、僕自身つくっていけるか、に関心がありますね。


