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2025.10.08 16:15

「今日キテるな」と感じる幸せ。TaiTanがロッテの水「THE DAY」に込めた意味

ラッパー/クリエイティブディレクターのTaiTan

——「THE DAY」という言葉は、もともとサーファーやスケートボーダーのスラングがルーツですね。

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休日に仲間と集まって、天気や波、滑りの調子が最高にそろった日をサーファーやスケートボーダーは“THE DAY”と呼ぶらしく、この言葉が素敵だなと昔から思っていました。日本語で言うと「めっちゃ最高じゃね」とか「キテるな」とかのニュアンス。”今日キテるな”って、全員が感じられる瞬間ってあるじゃないですか。そういうマイクロな高揚感って、まだ日常の中で名前が付けられていないなと思って。その概念を、水という商品の形で世に提案できたら、言葉を与えられていないがために見過ごされてきた感情を肯定できるかもという予感がありました。

先ほど話した“ハレの場”にふさわしい水という文脈と、この”THE DAY”的な感覚を掛け合わせたら、新しい価値を提示できると思った。その提案をロッテさんにしたところ、その場で「最高ですね。商標を取りましょう」と即答してくれました。元々はコンセプトの言葉としての提案だったのに、そのまま商品名として使おうと判断してくれて、とても気持ちの良いチームだなと思った記憶があります。間に入ってくれてるエージェンシー含めて、まさに「THE DAY」感あるチームでした。

——TaiTanさんは「流通空論」というPodcastを行うなど、「顧客への届け方」への関心が強いですよね。「THE DAY」は全国のドン・キホーテで販売していますが、なぜドンキだったのでしょう。

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これもたしかロッテさんからの提案でした。僕もドンキが好きだとラジオで何度も話していたので、文脈的に面白いと思ってくれたのもあるかもしれません。

流通においても、やっぱり今はナラティブの時代だと強く感じますね。企画背景や意図を、僕自身がポッドキャストで語るところまで含めてが、セットになって届いているというか。だからこそロッテのようなデカいカンパニーが僕にクリエイティブパートナーに選んでくれたり、ドンキに商品を卸そうという決定が生まれる訳ですよね。

——TaiTanさんの「クリエイティブ・ディレクター」という肩書きが、「商品ディレクター」ではない理由もそこにある気がします。ただ商品を作るだけでなく、それを軸にした環境そのものをナラティヴに形成出来ることが重要というか。

そうですね。プロダクトやブランドがどういう立ち位置で、どういうコンテクストの中にあるのかを様々なメディアで丁寧に語っていく。そして、色々な人とブランドの接点を作っていくのが、僕なりのスタイルなのかな、と思います。もちろんそれは、様々な人々との合意を文脈ごとに作っていくという意味ではクラシカルなスタイルでもあるのですが、Podcastとかラジオみたいな「軽くて」「非視覚」のメディアを起点に実行していることの特異さはあるのかもしれません。

企画初期に、ロッテチームに「インフルエンサーや大物タレントだって起用できるのに、なぜTaiTanなのか」という話をしたことがあってその時に「昔はインフルエンサーやタレントが商品をレコメンドして、それをマスに落としていくピラミッド型の構造だった。でも今はそれぞれの界隈やコミュニティーが円になって、大量に点在しているから、単純なフォロワー数の多寡を見るよりも、さまざまな界隈へ軽やかにブリッジできることの方が今の時代とはフィットするのかもしれない。という話をしたりもしました。

「THE DAY」の世界観を表現するためTaiTanが力を入れたコンセプトムービーには、トラックメイカーのOMSBが参加。MILLENNIUM PARADEやKing GnuなどのMV制作を手掛けるクリエイティブレーベル・PERIMETRON所属のmesoismが映像監督を手掛けた。

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文=フガクラ 編集=田中友梨 写真=山田大輔

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