録画利用に批判の声、プライバシー侵害への懸念
一部のユーザーが、従来モデルのグラスを使って音声や映像を録画することには、すでに反発を招いていた。あるTikTokユーザーは、料理教室で授業の様子をグラスで撮影したことで周囲を不快にさせてしまったと謝罪動画を投稿した。また別のユーザーは、レビュー目的でレストランの店員をグラスで撮影したとして非難を浴びた。
人々に無断で、気づかれずに録画をするのは難しいと考える人は、刑事ドラマやスパイ映画を1本でも見れば、その認識が誤りだと気づくだろう。都市には監視カメラ網が張り巡らされ、店舗やレストランには防犯カメラがあり、郊外の住宅の玄関にはほぼ必ずRing製カメラが設置されている。
我々はすでにスマートフォンで日常的にやり取りを録画しているが、スマホは少なくとも人の目に入りやすい。一方、グラスには録画中であることを示すランプがついているものの、それをテープや塗料で隠すのは難しくない。また、場合によっては「スマホをしまってほしい」と頼むのは普通だが、「眼鏡を外してほしい」と頼むのは、その人の視覚や行動能力を奪うことになりかねない。
監視だけでなく、身を守るツールとしての可能性
一方、監視の問題の裏側には、安全性の問題がある。例えば筆者自身も、朝のランニングの際に周囲を自動的に録画し、もし誰かに危害を加えられそうになったときに記録できるなら、はるかに安心できるだろう。また、差別やハラスメントに直面する特定の人々にとっても、他者とのやり取りを録画することで状況を対等にできる可能性がある。さらに、ネパールで最近起きたような大規模な抗議活動では、参加者の視点から出来事を記録することが大きな意味を持ち得る。
画面がユーザー本人にしか見えず、運転中の危険性やプライバシー喪失リスクも
終わりのない“注意散漫”の要素もある。新しいグラスのスクリーンはユーザー本人にしか見えず、リストバンドの操作も(少なくともデモを見る限り)微細なジェスチャーで行う。食卓で誰かがスマホを取り出してメッセージを打っているのはすぐに分かるが、グラスを操作しているのははるかに分かりにくい。こうしたグラスを装着して運転するのは危険につながりかねない一方、歩きながらの使用であれば、スマホを見下ろして歩くよりも快適で安全になる可能性が高い。
普及までにはあと数年かかるかもしれないが、あらゆる兆候を見れば、このグラスが近い将来「新たな日常」になることは明らかだ。同時に、AIを搭載したウェアラブル録音機も市場に出始めている。1日の会話すべてを記録し、要約してくれるという発想だ。会議で自分が言ったことを5分後には忘れてしまう人にとっては有用だろうが、自分の発言がすべて記録されることは多くの負の影響をもたらす可能性もある。
「ポスト・プライバシー」時代に、私たちは何を準備すべきか
今、必要なのは「ポスト・プライバシー時代」への備えを始めることだ。それは録音や同意に関するより厳格なガイドラインを設けることかもしれないし、公共の場以外でデバイスを使う際には双方の同意を必須とすることかもしれない。あるいは、空港でトラブルを起こして拡散されないように、人々に感情のコントロールを教育することかもしれない。いずれにせよ、今すぐ準備を始めなければならない。メタの今回の基調講演は「名プレゼン」として歴史に刻まれることはないだろう。しかし、私たちが世界を見る目を大きく変える転換点となったことは間違いない。


