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2025.10.03 08:00

メタのAIメガネ「Meta Ray-Ban Display」をめぐる、利便性とプライバシー課題

2024年9月、メタの開発者会議でのマーク・ザッカーバーグ(Photo by Andrej Sokolow/picture alliance via Getty Images)

グーグルによる過去の失敗を乗り越え、普及の壁を破れるか

スマートグラスは長年「次こそ普及する」と言われ続けてきた。2012年にはGoogle Glassが大きな期待を集めて登場し、一部のテック系ブロガーはシャワーを浴びながら着用し、サンフランシスコのバーでは顧客の使用を禁止するほどだった。しかし結局は普及せず、やがて消えていった。2019年にはカナダのスタートアップNorthが「Focals」と呼ばれるファッション性と機能性を融合させたスマートグラスを発売したが、価格が高く、1本1本がカスタムメイドだったため市場に定着せず、2020年に販売終了となった。

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Ray-Ban提携で200万本販売、普及への土台を築く

メタが2023年にRay-Banとの提携で発売したスマートグラス「Ray-Ban Meta」は一定の人気を博し、今年初めには200万本を販売したと報じられた。これは、決して小さな数字ではないが、主流の製品にはほど遠く、機能もかなり限定的だった。とはいえこのデバイスは、今回のMeta Ray-Ban Displayの登場に向けて市場の下地を作ったようにも思える。Meta Ray-Ban Displayは、AIを搭載した大衆向けのAR(拡張現実)グラスとしては、長年予想されてきたものに最も近い存在といえそうだ。

新モデルの機能、翻訳やAIアシスタントまで搭載

メタの発表によるとMeta Ray-Ban Displayのユーザーはメッセージの閲覧や送信、写真や動画の撮影及び確認、Instagramリールの視聴、さらにはビデオ通話も利用できるようになるという。また地図を使ったり、リアルタイム翻訳や字幕を表示したり、AIアシスタントに質問することも可能になる。

これらの操作は「Meta Neural Band」と呼ばれるリストバンドによって行い、手のさりげないジェスチャーでディスプレイを操作できる。例えば親指と人差し指を軽く合わせると選択機能が作動し、音楽の再生ボタンを押すのと同じ動作になる。

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初期モデルに不具合の懸念、デモ失敗が示す課題

もちろん、初期モデルには不具合が出るだろう。ザッカーバーグと登壇者はデモの失敗を「Wi-Fiの不調」のせいにしたが、世界有数のテック企業のキャンパスでさえWi-Fiに問題があるなら、一般ユーザーにとってはなおさら不安材料だ。加えて、このグラスはほとんどの場合、屋外で使われることになるため、米国のモバイルネットワーク事情を考えると満足できない場面も少なくないだろう。

また、リストバンドの使い方を習得するのもハードルになりそうだ。今回のデモで披露された文字入力の方法を見ても、筆者には昔の折りたたみ式の携帯電話でメールを打っていた頃を思い出させるものだった。しかし、そうした課題はあるにせよ、このデバイスは初めて本当に主流になり得るスマートグラスであり、いくつかの重要な問いを突きつけている。メタの製品は、数週間以内にも市場に出るかもしれないが、果たして私たちの社会はその受け入れの準備が本当に整っているのだろうかという疑問が浮かぶ。

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翻訳=上田裕資

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