よく笑う人には抑うつ傾向が少ないという研究報告がある。笑うからうつにならないのか。それとも、うつだから笑わないのか。卵かニワトリかみたいな話だが、これまでにハッキリとした答えは出ていなかった。そこで東北大学は、「笑わないから抑うつ状態に至る」という仮説を立て、6年間におよぶ検証を行った。
東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野・非常勤講師の玉田雄大氏らによる研究チームは、2016年から2022年まで6年間行われた日本老年学的評価研究の追跡調査に参加した65歳以上の高齢者3万2666人を対象に、日常生活での笑いの頻度と、追跡調査期間中に抑うつ状態の発生率について調査した。

参加者には、声を出して笑う機会が「ほぼ毎日」、「週に1〜5回程度」、「月に1〜3回程度」、「ほとんどない」のいずれかを回答してもらい、抑うつ状態を判断する15項目の質問に答えてもらった。その結果を統計学的な方法で分析したところ、ほとんど笑わない人は、ほぼ毎日笑う人にくらべて抑うつ状態の発生リスクが1.5倍も高いことがわかった。さらに、笑いの頻度が低いほど、発生リスクが高まる傾向も確認された。「笑わないから抑うつ状態に至る」ことが実証されたことになる。
とくに高齢期のうつは「心血管疾患や認知症、死亡リスクの上昇に関与する」とのことで、笑って心の健康のみならず、体の健康も保たれるのなら、こんなにハッピーなことはない。お笑いライブのチケットが医療保健の対象にならないものか。



