経済・社会

2025.10.03 11:15

「すごい地方公務員アワード」 新たな価値を創造する14名が受賞

shiro / Adobe Stock

若手が活躍しづらい組織のなかで

「地方公務員アワード」には30歳以下を対象とした「ネクストホープ賞」という賞がある。年功序列の自治体のなかでは若手が頭角を現すのは難しい。今回はそのような環境下にあっても愚直に成果を残した以下の2名が受賞した。

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東京都中野区の能登谷幸輝は、高齢者が近所で買い物できる場所がなくなった地域のために移動スーパーを誘致した。最も困難だったのは誘致する場所の確保だったが、UR都市機構の不燃化促進用地に着目して交渉し、土地使用賃貸借契約書を締結した。これまで300人以上が利用している。

毎年資格に挑戦。地域に飛び出すコーディネーター、能登谷幸
毎年資格に挑戦。地域に飛び出すコーディネーター、能登谷幸輝

兵庫県丹波市の神澤公大は、住宅資金貸付金の滞納額を約7700万円(令和3年度当初)から、3900万円(令和7年度当初)まで減少させた。また、多文化共生を推進し、全国で2例目となる全文を可能な限りやさしい日本語で書き上げた「丹波市多文化共生推進基本方針」を策定するとともに、「多文化共生マネージャー」と「入門・やさしい日本語認定講師」の資格を取得し、研鑽を続けている。

神澤公大は情熱と行動で結果を出すエンターテイナー
神澤公大は情熱と行動で結果を出すエンターテイナー

成果を上げる公務員を評価せよ

役所では成果を上げる職員の評価が、民間企業に比して驚くほど低い。「窓口のような地味な仕事には改善できることなどない」「行政に費用対効果を求めるのはおかしい」「アイツは目立ちたがり屋だ」「派手な仕事をしただけ」などと言われ、嫌がらせを受けることすらある。

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とても興味深いことだが、一般の人たちは公務員の不祥事については、すぐに批判的なスタンスをとるが、成果を上げた職員を批判することは少ない。一方で、公務員は不祥事を犯した公務員を批判する者は少ないが、成果を上げた公務員には批判めいた軽口を叩きがちだ。

しかしながら、地方公務員が日々の業務の指針とすべき地方自治法の第2条14項にはこうある。

<地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない> 

これを文字通り読むならば、成果を上げる公務員はやはり正当に評価されるべきではないだろうか。

役所は「平等」や「公平」、あるいは「チームプレー」などという理由を付けて、職員個人の成果を称え、報いることを避けてきた。もしこの状況が続くのであれば、成果を上げる人材は別の道へ進み、そうでない職員だけが組織に残ることになるだろう。

生成AIによって、個人の力がこれまでの何十倍、何百倍となる時代が到来しつつある。一方でやりたいこともなく、言われた作業だけを繰り返す人材は、その存在価値を急速に失っていく。だからこそ、住民のために新たな価値を創造できる職員は、絶対に辞めさせてはならない人材なのである。

加えて言うなら、住民1人1人も挑戦する公務員を評価し、サポートすべきだろう。なぜなら、挑戦する公務員の存在を認め、増やしていくことが、地域の価値や持続可能性を高め、よりよい社会を生み出すからである。

連載:公務員イノベーター列伝
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文=加藤 年紀

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