創意工夫で行政の仕事を支える者たち
行政にはビジネスマンが普段知ることのないさまざまな事業が存在している。そのような地道な仕事のなかでも着実に成果を上げた4人を紹介したい。
熊本県玉名市の木下義昭は全国技術者の鑑だ。2016年当時、市が管理する約830の橋のうち、点検が完了していたのはわずか2%という厳しい状況だった。そこで木下は職員による直営施工を核として、地元建設業や学識経験者との連携により、修繕完了率100%、維持管理費20億円の削減を達成。土木学会賞「論文賞」を受賞した。
静岡県の磐田市立総合病院の放射線技師として働く朝比奈克至は、外国人が多く住む磐田市において、医療現場用外国語翻訳アプリ「フレナビ」を自ら開発。外国人患者の操作時間を40パーセント短縮し、病院スタッフの手間やストレスも大幅に改善した。しかも介護タクシー予約アプリも自作で開発し、病院スタッフの予約対応時間は70パーセント削減された。
続いて紹介するのは愛知県豊田市の鈴木満明だ。25歳からの10年間で133件の業務改善を実施し、累計で約7億円の経費と6400時間以上を削減した。鈴木は全国で初めて乗換案内アプリでバス1日乗車券を購入できる連携を進め、いまでは100以上の自治体と企業にも広がっている。
8人目に紹介するのが、北海道北見市の及川慎太郎だ。住民にも職員にも効率的な窓口サービスの実現に取り組み、全国から視察が続く。窓口業務に光を当て、多くの現場職員と地道な改善を積み上げた成果は次世代の職員に受け継がれ、各地の自治体職員と高めあうという輪が生まれている。北見市と地元企業が開発したシステムは60以上の自治体で利用され、著作権使用料が市の歳入にも。
地域の力を伸ばして愛される公務員たち
地方公務員は都市計画などをはじめ、その地域の繁栄に貢献すべき存在である。次は地域の力を伸ばし、地域に愛される4人の受賞者を紹介したい。
千葉県四街道市の齋藤久光は事業基金を設立し、NPOや市民団体が自ら提案した企画を行政と協力して実行できる仕組みを築いた。単なる資金支援にとどまらず、互いの知恵や人材、技術を持ち寄ることで、地域を成長させる実践型の協働スタイルを確立。さらに図書館の改革や住民参画の仕掛けなどを通じて、多様な世代が関わり合い、魅力ある地域づくりを実践するスタイルを築き上げた。
愛知県豊田市の天野博之は、豊田市足助地区の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)選定と、それに伴うまちづくり活動の立役者だ。ゴミ屋敷問題では住民と対話をして地域の住環境の向上を実現したり、地元の「四季桜」から抽出した酵母で新たな産品を開発したりと、行く先々で地域の課題解決を進めた。弥生時代の日本列島最東端の製鉄遺跡として学会報告された「南山畑遺跡」の調査担当者と報告書の主著者としても活躍している。
奈良県王寺町の村田大地は、地方議会というと住民も関心を持ちづらいが、そこでの重要な情報を伝えるために、担当部署に異動後、すぐに議会広報誌を即リニューアル。2年連続で全国議会広報コンクールで入選し、年間議会中継視聴数も2000件から8000件へと増加させた。さらに自治体広報でも改革を進め、こちらも全国広報コンクールで入選。一連の広報の取り組みは住民アンケートで施策満足度1位、約90パーセントの住民が広報紙を愛読する結果となった。
最後に紹介するのは福井県鯖江市の横井直人だ。横井は土木技師としての本業に加え、地域の未来を担う若者たちの「居場所と出番づくり」を実現する数々のプロジェクトを、協賛やクラウドファンディングで資金を集めて立ち上げてきた。なかでも有名なのは「鯖江市役所JK課プロジェクト」の創設とサポート。なお、横井の実の娘さんも中学2年生の時から地域で「子ども食堂」を主宰している。横井とともにNPOで活動する同僚は「どうしたら、そんな子に育つのだろうか」と感嘆していた。


