地方公務員の退職率が上昇し、各自治体では採用難に陥っている。まだあまり知られてはいないが、民間企業と同様に、あるいはそれ以上に人材の確保が難しくなってきている。
そんななか役所から真っ先に去っていくのは、転職に困らない人脈や能力をもった人材かもしれない。しかし一方では、転職すればより多くの給料を得ることができるにもかかわらず、役所に留まり、素晴らしい成果を上げている人たちも存在する。
「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」は、2017年から毎年開催され、今年で9回目の開催となる。これまでの累計受賞者は108名となり、ついに100名を突破した。
協賛団体にはNECソリューションイノベータ、PR TIMES、地域創生Coデザイン研究所(NTT西日本グループ)、アルファドライブなどが参画することから、成果を上げる地方公務員への注目や期待が、企業からも高まっているといえるだろう。
今回の受賞者を紹介しよう。日々挑戦し、それぞれの役割のなかで公益に資する14名の受賞者たちだ。
ビジネスのわかる公務員
初めに岡山県津山市の沼泰弘を紹介したい。沼は「つやま産業支援センター」の設立を主導。開発支援費用約8700万円に対し、支援製品の売上は約13億5000万円となる。「公務員にはビジネスがわからない」などと言われがちだが、沼の成果はその説を強力に否定する。
次に紹介するのは、「茨城県県南農林事務所つくば地域農業改良普及センター」の油谷百合子だ。パン用小麦推進の2代目担当者として引き継ぎ、ICT導入やLLP設立などを実行して生産量を倍増させた。パン用の小麦は地域標準品種の約2.3倍の粗利益となり(当時)、農業者の努力を価格に反映する仕組みを実現した。
岐阜県飛騨市の上田昌子は、人口2万1000人の飛騨市で、市のファンクラブ会員数を1万7000人にまで成長させた。2020年には地域内外の住民が地域課題を“手伝いに来る”仕組み「ヒダスケ!」を創設、運営も担当し、年間1500人が飛騨市民の「困りごと」の解決やチャレンジしたいことのために、飛騨市に足を運ぶ。ふるさと納税額も3億5000万円から18億円へと押し上げた。
4人目に紹介するのは、奈良県生駒市の和田真人だ。耕作放棄地の解消、地域活性化、地産地消などのために地ビール「IKOMABEER」を開発。市民と深く関わるなかで、ビジネスで課題解決を試みた。2024年には瓶2057本、樽103リットルを販売。自ら一般社団法人を設立し、酒類販売免許を取得。クラウドファンディングで約250万円の資金を得たため、税金の投入は一切ない。



