食&酒

2025.10.15 11:15

1席100万円で落札も 「食オク!」参加店に聞くオークションの存在意義

『成生』店主の志村剛生氏

「自分たちの店が存続できているのは、生産者の皆さまの尽力のおかげです。だからまずは第一次産業を盛り上げるために収益を使いたいと思ったんです。最初は“研究費”の名目でお金を還元したかったのですが、誰も受け取ってくれなくて……」と、「成生」志村氏は生産者招待企画の経緯を明かす。

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何か良い策はないかと模索していたところ、「サスエ前田魚店」の前田氏が「お金ではなく経験で還元しよう、それが皆のモチベーションに繋がる」と提案。漁師や店の若いスタッフを取りまとめ、店舗と生産者を繋ぐパイプ役を果たしてくれた。

『サスエ前田魚店』5代目店主の前田尚毅氏
『サスエ前田魚店』5代目店主の前田尚毅氏

「サスエ前田魚店」の鮮魚は日本全国の高級店や予約困難店が仕入れているが、「最終的にどのような料理となって提供されるのか」を現場のスタッフが知る機会はほぼ皆無だった。今回のイベントでは、彼らはもちろん家族もが、その魚の真骨頂を実感できたのである。参加者の感動と反響は大きく、「次の日の漁におけるモチベーションが全然違った」との報告も入ってきたという。

志村氏は、「食オク!を始めた当初は、正直色々と文句を言われることもありました。でも信念をもって続けていけば、飲食業界だけではなく第一次産業の底上げをすることができると思っています。これからも定期的に出品させていただき、皆様への恩返しの会を継続させたいですね」と笑顔を見せた。

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スタッフの経験に投資

食オク!出品店舗の多くは、オークションで得た収益を様々な形で従業員に還元している。人手不足が深刻化している昨今、従業員の確保とその定着は、サービスの向上や採用・育成コストの削減につながることにもなり、いわずもがな、従業員の満足度向上は安定した店舗経営の重要な鍵となる。

興味深い取り組みをしている一例が、「スペイン料理 acá」である。20年に京都から東京日本橋に進出し、その人気はますます過熱。今や最も予約困難なレストランの一つとして知られており、食オク!リリース当初から「2席 41万2000円」という高額な価格がつき話題を呼んだ。

オークションへの参加を決めた理由について、オーナーシェフの東鉄雄氏は、「自分たちの店舗や料理がどのくらい認知されているのか、そしてどのくらいの価値が付くものなのかを客観的に知りたかったのも理由のひとつです」と語る。結果、予想を上回る落札額がつき、その期待値の高さを知ったことで「気が引き締まる」思いだったという。これがスタッフの張り合いとなり、店舗全体にさらに良い緊張感がみなぎるようになった。

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文=瀬川 あずさ

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