相次ぐ訴訟と当局の調査、約360億円の賠償命令も
しかし、テスラの技術には複数の訴訟が持ち上がり、監視の目はいっそう厳しくなっている。発端のひとつは、マスクがFSDやオートパイロットの性能を誇張したとしてオーナーたちが起こした集団訴訟だ。またカリフォルニア州では、車両局(DMV)がこれらの名称を機能の宣伝に使うことを禁じようとしている。
さらに先月、フロリダ州の連邦裁判所の陪審は、2019年にオートパイロット作動中に発生した死亡事故についてテスラに部分的な責任があると認定し、2億4300万ドル(約360億円)の損害賠償を命じた。同社は控訴中だが、カリフォルニアで起きたオートパイロット関連の事故をめぐる別の2件の訴訟では、先日和解に応じている。オートパイロットはFSDよりも限定的な運転支援機能しか持たない。
試験運用のロボタクシー事業も事故報告が相次ぐ
本社を置くオースティンで、テスラは一部のオーナーを対象に試験的なロボタクシー事業も運営している。名目程度の料金で、特別仕様のFSDを搭載した車両に乗れる仕組みだ。このシステムは顧客向けのものとはわずかに仕様が異なるが、その違いは詳細には説明されていない。6月に始まったこのサービスはすでに問題に直面しており、7月には1日に3件の事故が報告された。
米国内の複数都市で完全自動運転のロボタクシーを走らせているウェイモとは違い、テスラの車両には前席に安全ドライバーが座り、FSDの動作を監視している。ニュース報道を基に事故を集計するサイト「TeslaDeaths.com」によれば、オートパイロットやFSDが関与した事故による死者はこれまでに59人に上る。
フォーブスはマスクとテスラに対し、FSDの安全性についてコメントを求めたが、回答はなかった。テスラは近く最新版ソフトを公開するとみられる。
FSDの問題を追う専門家ダン・オダウドとドーン・プロジェクト
フォーブスは8月28日にアップデートされた最新のFSDを、テスラの最新ハードウェアを搭載した2023年型モデルYの90分間の走行テストで検証した。この車両は、ソフトウェア開発者のダン・オダウドが設立した団体「ドーン・プロジェクト」が所有している。オダウドはここ数年、FSDの問題を指摘する最も声高な批判者となっており、スーパーボウルで自費広告を打つなどして問題を世に訴えてきた人物だ。
「これはベータ版ですらない。アルファ版レベルの製品であり、顧客に渡すべきものではない」とオダウドはフォーブスに語った。「ただの試作品であって、製品ではない」。
FSDは時に自動運転システムのように振る舞う。目的地を入力すれば、ハンズフリーモードで問題なく走り出す。ウインカーを出して曲がり、標識や信号でも停止し、センターコンソールに映し出される仮想映像に基づき周囲の状況をよく観察しているように見える。ところが現実には、交通量が少なく天候が良い理想的な状況でも、市街地ではエラーが頻発する。そのためドライバーは常に警戒を怠らず、即座にハンドルを握れる態勢を保たなければならない。結局、注意深いドライバーにとってFSDは、人間が運転するよりシンプルでも気楽でもない。


