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2025.10.01 12:00

Z世代はなぜ「古き良き時代」にひかれるのか? 裏にある願望を心理学者が解説

Nadezhda Mikhailova / Getty Images

Nadezhda Mikhailova / Getty Images

田舎暮らしやゆっくりとした暮らしを理想とする「Cottagecore(コテージコア)」、妖精や魔法などをロマンチックなものとしてとらえる「Fairycore(フェアリーコア)」、子どもの純粋さや遊び心の要素を表す「Kidcore(キッドコア)」など、近年語尾に「コア」をつける新しいタイプのインターネット上の美学が出現している。これらの言葉はネットを席巻することが多く、共有された社会文化的経験でありながらニッチなものにテーマや名称をつけるのに活用されている。

「コア」がついた言葉は現在、さまざまなSNSで爆発的に広まっているが、それらのルーツの多くはPinterest(ピンタレスト)のボードだ。10年前にユーザーが極めて特殊な美学に関するものを収集・共有し始めたプラットフォームだ。主に画像を扱うピンタレストのボードでは、サブカルチャーが名前を持つ前に視覚に訴えるものになる。これこそが気分やスタイル、アイデンティティ全体を表す一種の略語としての接尾辞「コア」が台頭した理由かもしれない。

見聞きすることが増えているそのような「コア」の1つに「Nostalgia Core(ノスタルジアコア)」がある。スタイルというよりも昔の記憶や おそらく今よりゆっくりでシンプルだった時代への憧れを意味する言葉だ。

ノスタルジアコアは本質的には、夏は果てしなく続くと感じられ、テクノロジーは私たちの生活全体が頼るものではなく魔法のようなものに感じられた世界、要するに“些細なことに気づけるほど、生活のペースがゆっくりだった時代”に戻りたいという集団的な願望を表す。

Y2Kの復活

この大きな流れはY2K(西暦2000年代)時代の美学の復活に見ることができる。ローライズジーンズや蝶の形をしたクリップ、二つ折りの携帯電話、画像の粗いグラフィック、エンタメSNS「MySpace(マイスペース)」風のフィルター、TikTok(ティックトック)でリバイバルしている2000年代初頭に流行した曲など、初期のインターネット時代は楽観主義と遊び心の時代としてとらえ直され、受け入れられている。

Y2Kスタイルはノスタルジアコアの真髄を体現し、時代を特徴づける文化を再現している。2023年の研究ではファッションの分野でこの傾向を探り、1990年代後半に生まれたY2K美学が過去と未来の間にある緊張感を完璧にとらえていることを強調している。

当時、人々は新しい世紀を前にしていた。テクノロジーとデジタルの時代に対する興奮が入り混じっていた。デザイナーたちはメタリックな生地や、サイバー風の細部、遊び心のあるレトロな美学を融合させてY2Kスタイルとして知られるようになるものを作り出した。

実際のところ、Z世代のオーディエンスは当時を直に体験してはいないが、懐かしくも新鮮なものとして受け入れている。こうしたリバイバルは、未来が洋々と広がっているとまだ感じられた時代への広範な憧れを反映しており、ノスタルジアコアの台頭の主な理由でもある。

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翻訳=溝口慈子

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