欧州

2025.09.30 08:00

欧州はロシアの弱点である「経済」に焦点を当てよ

ロシア中央銀行(Getty Images)

ロシアは2008年、ジョージアへの侵攻後、軍の劣悪な状態(訓練、装備、戦術)について事後検証を行い、本格的な近代化を開始した。ロシア軍について多くの批評家は、軍隊の構造や訓練などは救いようのない状態だが、他の要素、特に軍事技術は大きく改善されたと評価するだろう。ドイツ、スペイン、イタリアはいずれも軍隊の近代化が必要であり、アイルランドのような国々は軍隊をほぼゼロから立て直す必要がある。対立が激化する現代では、軍隊の近代化を適切に遂行することが極めて重要だ。

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最近、コペンハーゲンやワルシャワ、ベルリンなどの都市で感じられている2つ目の要素は、ロシアの全面戦争の構想だ。筆者は2021年、ウクライナ侵攻の数カ月前に「大戦争から総力戦へ」と題し、ロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長の総力戦戦略について論じた。これは、サイバー攻撃や国境挑発、プロパガンダ、秘密工作など、多様な戦略を包含する戦争観だ。この戦略は東欧全域で顕著に表れており、ボスニアにおける不和の扇動やハンガリー政治の空洞化、特にベラルーシを欧州連合(EU)に対する地政学的な攻撃犬として利用していることなどから見て取れる。

ロシアが無人機(ドローン)や航空機を使って欧州の領空を侵犯していることは、サイバー攻撃という付随的な要素も相まって、同国が欧州の防衛体制を圧迫しながら探りを入れるとともに、何より米国の北大西洋条約機構(NATO)への関与を試す意図を示すものだ。筆者の懸念は、事態の悪化が遠くない将来に起こり得ることであり、ウクライナ侵攻が欧州に波及する危険性は無視できないということだ。実際、ドイツやフランスの当局は、ロシアとの紛争で発生する負傷者を受け入れるため、病院に数千床のベッドを追加する必要があると警告している。

欧州の政策立案者は、苦境にあるロシア経済の機能停止の可能性も視野に入れなければならない。同国のGDP成長率はかろうじてプラスを保っているものの、経済は一種の継続的な景気後退状態、あるいは物価高と景気悪化が重なるスタグフレーション状態にあると言ってよい。労働市場、銀行部門、消費者部門は脆弱(ぜいじゃく)性の焦点だ。長期的には、軍事ケインズ主義の影響によって経済の潜在力が空洞化していく。米国防総省は敵対する国の経済の脆弱性を分析するため、戦略チームに金融市場専門家を加え始めた。欧州もこれに倣うべきだ。

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欧州の制裁は中途半端で、依然として容易に対処可能な課題が山積している。例えば、ギリシャの船主によるロシア産天然資源輸出の支援、オーストリアやキプロスをはじめとするEU諸国を経由するロシア資金の継続的な流入、そして言うまでもなくロシア人観光客の流入などが挙げられる。さらに、ロシアの銀行や企業を機能停止に追い込み、東欧や中央アジア諸国での代理取引を阻止するための手段は数多く存在する。

欧州は既にロシアとの影の戦争状態にあるが、米国のドナルド・トランプ政権からはほとんど支援を得られないだろう。欧州はロシアの弱点に焦点を当てる必要がある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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