テクノロジー

2025.09.30 12:00

なぜ、AIの機能は多ければ多いほど良いとは限らないのか?

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AIの採用を急ぐあまり、多くの企業が見覚えのあるパターンに陥っている。作り、ローンチし、祝う間もなくすぐにまた作り始めるのだ。新機能は矢継ぎ早にリリースされるが、それは必ずしもユーザーが必要としているからではなく、チームが「何かをしなければならない」というプレッシャーにさらされているからだ。

この現象を、プロダクトの専門家で著者でもあるメリッサ・ペリーは「ビルドトラップ」(構築の罠)と呼ぶ。すなわち、企業が機能を積み上げることを、実際の価値提供だと取り違えるサイクルである。とりわけ急速に進化するAIの領域では、勢いがしばしば進歩と混同されるため、誘惑にかられやすい。

最初のアイデアが常に最良とは限らない

しかしこのサイクルの問題は、最初のアイデアが常に最良とは限らない点にあるとペリーは言う。「私たちがすぐにビルドモードに入ってしまうと、顧客がこれらの製品にどう反応するのか、何をしたいのか、あるいはそれが本当に問題を解決するのかについて、十分な情報を持っていないままなのです」と彼女は書く。「私たちのデザインやプロダクトの意思決定は事実ではなく『最良の推測』に基づくことになりますが、その推測のほとんどは間違っています」。

明確な目的のない機能開発は、肥大化したプロダクト、無駄なリソース、そして困惑するユーザーを生む。とりわけAIでは、機能は多ければ良いとは限らない。実際には、いつ作るのをやめるかを見極めることは、いつ作り始めるかと同じくらい重要である。

多すぎることが逆効果になるとき

AIへの期待が過熱しているのは周知の事実だが、必ずしも有益とは言えない。S&P Global Market Intelligenceの分析によれば、AIの取り組みの大半を放棄した企業の割合は今年42%に跳ね上がり、前年の17%から大きく増加した。

問題は、企業が新しいAIのイノベーションを積極的に打ち出している一方で、それがユーザーの必要や望みに必ずしも合致していない点にある。例えばアップルは、iPhone 16の重要な差別化要素としてApple Intelligence(アップル・インテリジェンス)を売り込んだ。CNETのテクノロジー記者が指摘したように、そうしたメッセージは「彼らが実際に何を重視し、何を達成しようとしているのかを分かりにくくする」可能性がある。そして実際、報告によれば、iPhoneユーザーの70%以上が新しいAI機能は自分のスマホ体験に「ほとんど、あるいは全く価値を付加しなかった」と感じている。

企業が作るものと、顧客が実際に有用だと感じるものの乖離が、問題の核心なのだ。機能が多いほどインパクトが大きいという誤解があるが、現実には不要な複雑さを増やすだけなのだ。

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翻訳=酒匂寛

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