また電通が独自に実施したグローバルリサーチレポートによると、アニメを見る配信サービスについて実施した全世界対象のアンケートに回答した人のうち、48%がNetflixを挙げ、Disney+やPrime Video、クランチロールなどを上回ったという。地域別で見ても、北米では63%、中東・欧州・アフリカ地域では56%、アジアでも36%で1位につけており、アニメへの入り口としてNetflixが存在感を見せていることが浮き彫りとなった。
こうした成長の背景には、作品ラインナップの拡充と、ローカライズの体制づくり、そしてその制作を支えるプロダクションとの連携体制の強化が挙げられる。
「10年前のアニメ戦略における目標は、Netflixといえばグローバルにさしていくぞという非常にわかりやすいものでした。その後社内でもチームが分かれていき、日本は日本のチームできっちりと日本発のアニメに向き合い、まず国内で面白いと思ってもらえる作品の購入と製作に当たることになりました。ローカルにフォーカスしていくという日本特有のアニメ戦略の導入が、一つの大きなシフトチェンジでした」(坂本)
そのターニングポイントとなった作品が、2019年12月30日から全世界独占配信された、超能力者の高校生が主人公のギャグ漫画を基にした『斉木楠雄』シリーズの「Ψ始動編」だった。
「2016年から放送されていた人気作の新シリーズを弊社のオリジナル作品として独占配信しました。結果として、アニメファンだけでなくこれまでリーチできなかった幅広い層に作品を届けることができ、原作者の麻生周一先生にも制作会社などのパートナー企業にも『Netflixでよかった』と、とても喜んでいただけた。そのあたりがブレイクスルーポイントだったと思います」(山野)
現在、Netflixのコンテンツは、最大33言語で字幕が提供され、吹き替え版も人気が高い。特にアメリカ・ブラジル・メキシコでは視聴者の80%以上が吹き替え版を利用しているという。さらに世界各国への配信に向けたトレーラーの制作や各国語のサブタイトルは、「なぜこういうサブタイトルなのか」を解説した文書をつくったうえで決定されている。このように配信される各国の言語や文化背景に合わせたローカライズを重視する姿勢は、制作会社などのパートナーからの信頼も厚い。ここに至るまでの道のりにもさまざまな試行錯誤があったという。


