北米

2025.10.01 13:00

水原一平の「胴元」が語る違法スポーツ賭博 「プロ選手の半数関与」

大谷翔平の元通訳、水原一平(Jim McIsaac/Getty Images)

大谷翔平の元通訳、水原一平(Jim McIsaac/Getty Images)

ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平の元通訳、水原一平が手を染めた違法なスポーツ賭博。水原は大谷の資金を盗用して賭博を続け、銀行詐欺と脱税で懲役5年の判決を受けた。その賭けを受け付けていたのが、カリフォルニア州で違法賭博を仕切っていた胴元マシュー・ボウヤーである。ボウヤーは野球を含むさまざまな競技を対象に、大規模な違法スポーツ賭博を運営していた。その結果、違法賭博運営やマネーロンダリングなどで有罪となり、懲役1年1日の判決を受けた。

水原から総額3億2600万ドル(約482億円)を受け取ったボウヤーは、球界全体を揺るがすスキャンダルの中心人物となった。しかし彼は、この事件は全体のごく一部にすぎないと主張する。米国では実際に、840億ドル(約12.4兆円)規模に達するとされる巨大な違法スポーツ賭博市場が存在している。

大谷翔平を巻き込んだ、総額約482億円の違法賭博スキャンダル

2023年10月5日午前9時30分、カリフォルニア州サンフアン・カピストラーノの自宅の車道で、当時48歳のボウヤーは、息子をチャイルドシートに固定していた。そのとき「FBIだ。動くな!」という叫び声を耳にした。振り返ると、ライフルを構え戦術用装備を身に着けた20人以上の捜査官が、彼と自宅を取り囲んでいた。

賭博のブックメーカー(胴元)として、その年に1200人の顧客から10億ドル(約1480億円)のスポーツ賭博を受け付けていたボウヤーは、事態の深刻さを理解していた。捜査官が自宅に来た理由は、ある特定の顧客──ドジャースのスター選手大谷翔平の通訳、水原一平だろうと考えていた。水原はわずか2年あまりで4020万ドル(約59億円)のギャンブルの負債を抱えていた。

このスキャンダルは、3度のMVPに輝き、MLBで2番目に高額な年俸を得る大谷を危うく巻き込むところだった。大谷は一切の関与を否定し、犯罪で訴追されることもなかった。彼は、「水原に数百万ドルをだまし取られた」と語った。捜査の結果、実際にギャンブルをしていたのは水原であったことが判明した。さらに彼は大谷から合計1620万ドル(約24億円)を盗み出し、2〜3週間ごとにボウヤーへ50万ドル(約7400万円)を支払っていた。

水原は銀行詐欺と脱税で5年の実刑判決を受けた。一方のボウヤーは、違法賭博運営、マネーロンダリング、虚偽の納税申告で1年と1日の刑を言い渡された。

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翻訳=上田裕資

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