約12.4兆円規模の闇市場、米国にはびこる違法ブックメーカーの実態
ボウヤーは、近年最大のスポーツ賭博スキャンダルの中心人物として知られるが、彼の有罪判決が違法ブックメーカー業界の終焉を意味するわけではない。「違法な賭けは常に存在し続ける」とボウヤーはフォーブスに語った。その言葉を裏付ける数字はある。米国ゲーミング協会によれば、違法なスポーツ賭博は、ここ1年で840億ドル(約12.4兆円)の賭け金を扱い、50億ドル(約7400億円)の収益を上げたという。一方、合法的なスポーツ賭博は2024年に1499億ドル(約22.2兆円)の掛け金を扱い、137億8000万ドル(約2兆円)の収益を得ていた。
「この国には現在100万人のブックメーカーがいるが、人々はそれに気づいていない」とボウヤーは語る。「とくに大都市にはブックメーカーが必ずいる」──あるいは、別の場所にいる親玉のために賭けを受け付ける“ランナー”がいるという。ゴルフ場で顧客を見つけていたというボウヤーは、2021年にサンディエゴで開かれた地下ポーカーゲームで水原と出会った。
「結局のところ、違法ブックメーカーは全米のどこにでも存在する」と彼は語った。
NBAとNFLにも激震、後を絶たない米国スポーツ界の賭博汚染
水原とボウヤーの件は、スポーツ界のスキャンダルとしては最大級かもしれないが、摘発された中で最新のものではない。今月初め、全米大学体育協会(NCAA)は6校の元大学バスケットボール選手13人を調査すると発表した。彼らは自分たちのチームへの賭けや逆張りによって、試合結果を操作した疑いが持たれている。
2024年4月には、NBAがトロント・ラプターズのセンター、ジョンテイ・ポーターに永久追放処分を科した。これはリーグの調査によって、彼がNBAの試合に賭け、スポーツ賭博業者に情報を流し、賭け目的で自らの出場時間を制限していたことが判明したためだ。
NFLでもこれまで複数の選手が賭博規則違反で出場停止となっている。アトランタ・ファルコンズのワイドレシーバーだったカルビン・リドリー、デトロイト・ライオンズの元ワイドレシーバー、クインテズ・セファス、ワシントン・コマンダースの元ディフェンシブエンド、シャカ・トニーなどだ。こうしたスキャンダルはホッケーやゴルフ、UFCなど他の競技にも及んでいる。
「プロアスリートの約半数がスポーツ賭博をしている」と見積もるボウヤーは、とりわけ大学スポーツで今後さらに多くのスキャンダルが明るみに出ると予想している。彼は、自身の顧客の15〜20%がアスリートだったと考えているが、彼らが自分の競技に賭けることは許さなかったという。
「まだ表に出ていないものや、発覚していないもの、あるいは実際、逃げ切ったケースも多い」とボウヤーは語った。


