贈り、贈られたモノや体験は、人生を変えるほどの力を持つことがある。企業のトップ、リーダーたちが経験した、モノや体験に介在する特別な思い入れを紹介する。自身の生き方、サクセスストーリーにも影響を及ぼしたであろう「GIFT」の逸話には人間味あふれる姿がある。希薄化も言われる現代の人間関係とは異なる、特別な関係だ。
THE GIFT #28
関口 猛
オンワードパーソナルスタイル代表取締役社長
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生地は赤峰氏がオーダーしたオリジナル。
グレーに赤を効かせたチェックは、レアな配色なのだとか。
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生地は赤峰氏がオーダーしたオリジナル。グレーに赤を効かせたチェックは、レアな配色なのだとか。
紳士服業界の重鎮であるインコントロの赤峰幸生さんとの出会いは、2012年のこと。オンワード樫山紳士服のディレクター業務を依頼したことが始まりだ。特に私が「五大陸」のリブランディングに携わった3年強の間は毎日机を並べ、スーツや洋服全般のこと、さらには食や生活様式に至るまで、あらゆることを教わった。
特に印象深いのが「スーツの生地はへたらないものを選ぶ」という話だ。光沢のある軽やかな生地は一見美しいが、すぐにくたびれてしまう。だが、しっかり織られた重厚な生地は何十年も着られる愛用品になるのだと。
14年、私の昇進祝いに赤峰さんが仕立ててくれたスーツは、まさに氏の哲学を体現していた。日本の機屋に製作を依頼したという生地は、重厚ながら柄の表現は繊細。海外のお客様との商談などここぞというときに着ているが、どこのスーツかと尋ねられない日はない。そのたび、手間暇かけて織られた生地のスーツこそ、世界に通用する品質なのだと実感する。赤峰さんの教えは、弊社が掲げる「良いスーツの民主化」の原点でもある。10余年愛用してもなお美しいこのスーツを着るたび、使命の実現にまい進せねばと思うのだ。
せきぐち・たけし◎東京都出身。1995年オンワード樫山に入社。メンズビジネス部門、ライセンスビジネス、2012年に「五大陸」ブランドに携わる。17年にオンワードパーソナルスタイル代表取締役に就任。これまでにないオーダースーツシステムを確立。自身でも年間で数十着のスーツを買う。アウトドア好きでも知られる。



