咬まれれば数十秒で死に至るおそれ
クモオクサリヘビの毒は、恐るべき特徴を備えている。細胞毒の一種であり、さまざまなタイプの細胞を破壊するのだ。強力な凝固促進作用をもち、咬まれた獲物はわずか13秒のうちに、制御不能の内出血を発症し(凝固因子が消費され尽くしてしまうことで、止血に必要な因子が不足するため)、ほどなく死に至る。
このヘビの毒は、鳥の捕食に特化して進化してきたものだが、ヒトにとっても致死的だ。クモオクサリヘビの毒の凝固促進作用は、世界で最も咬傷死者の多い毒蛇の一つである、南アジアのラッセルクサリヘビ(学名:Daboia russelii)の毒に似ている。ただし、2021年に学術誌『Toxins』に掲載された論文によれば、クモオクサリヘビの対人咬傷の事例は知られていない。
ヒトがクモオクサリヘビに咬まれた場合に何が起こるのかに関しては、憶測の範囲を出ないものの、先述の論文で考察がなされている。これによると、毒の特性から判断して、軽症の場合、咬傷患者は嘔吐や発熱を発症する可能性がある。多量の毒が注入された場合、血液凝固障害や腎不全を引き起こし、死亡のおそれがある。さらに、意識混濁、めまい、頭痛、発作といった神経症状を伴う可能性もある。
現時点で知られているクモオクサリヘビの地理的分布域は狭いものの、イラン東部では調査が行われていないため、実際の分布域について確実なことはいえない。この種の生態についても知見は乏しく、個体群サイズの推定はまだ行われていない。ただし、2020年6月に学術誌『Zoology in the Middle East』に掲載された論文では、急速に減少しているとの見解が示された。
イランでは野生動物の取引が禁止されているものの、ソーシャルメディアを使ったクモオクサリヘビの売買が確認されている。2018年には、ドイツのペット市場で、10匹のクモオクサリヘビが出回った証拠が浮上した。研究者たちは、絶滅の危機に瀕したこのヘビの研究を進め、適切な保全措置を講じるよう呼びかけている。


