3. きょうだい間の対抗意識
生まれ順はしばしば、ビジネスにおける人々の行動選択の下地となるが、きょうだい間の対抗意識が、これを一層激化させる可能性もある。
実際、前述した『Academy of Management Journal』の研究は、こうした対抗意識が、生まれ順によって作り出されたきょうだい間の差異を積極的に増幅する点に触れている。
そのためたいていの場合、長子は親から家督を継ぐよう教え込まれるが、中間子や比較的若いきょうだいはこれに対抗して、自身の個性を磨く可能性が強く、その結果として、競争に参加する意欲を高めるか、反抗するという行動に出るという。
『Journal of Marriage and Family』に掲載された研究は、こうしたきょうだい間の対抗意識が根の深いものになる理由を解き明かしている。こちらの研究チームは、複数の家族を対象とした長期調査の中で、親から他のきょうだいと違う扱いを受けたと感じている子どもには、明確なマイナスの影響が認められたと記している。
例えば、きょうだいと比べて「親の接し方が冷たく、応援してもらえなかった」と感じている、といったケースでは、うつ病の症状を示す割合が多いほか、きょうだいとの関係も、目に見えて冷え込んでいるという。
この文脈で見ると、親による子どものえこひいきは、非常に現実的な「消えない傷」を残す恐れがあるようだ。きょうだいを見る目や扱いが根本的に変化し、大人になってもかなりの期間、その影響が残る恐れもある。
マードック家の子どもたちも、こうした体験をしてきた可能性がある。次男のジェームズがリベラルな信条を持ち、FOXニュースに対する右派からの影響を公に批判していることを考えれば、ジェームズがラクランにとって最大のライバルだったことは想像に難くない。しかし結局は、父ルパートの政治信条や価値観を完璧に受け継いでいる従順な長男が、トップの座に着くのは不可避だったはずだ。
その意味で、公にも明らかになっている2人の不仲は、長きにわたる扱いの違いが表に出たものと捉えて良いだろう。父ルパートのお気に入りの継承者であるラクランは、幼いころから帝王学を仕込まれ、父の座を継ぐものとして認められてきた可能性が高い。対照的にジェームズは、対抗策として、よそに評価の場を求めるしかなかった。その結果、独自のアイデンティティを築き上げたが、それは同時に、父親の世界観を拒否し、反発するものだった。
その結果勃発した法廷闘争は、多くの意味で、2人の子ども時代のけんかの大人版と捉えられるだろう。これは一番愛されている者、信頼されている者、そして究極的には、一族のレガシーを定義するのにふさわしい者をめぐる争いなのだ。


