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2025.09.30 10:30

「スターリンクフォン」誕生の可能性、スペースXが専用周波数帯を2.5兆円で買収

超大型宇宙機スターシップからスターリンク衛星がリリースされるイメージイラスト(c)SpaceX

スペースXが購入する以前にこの周波数帯は、エコスターのMSS(衛星通信サービス)と、その子会社であるディッシュ・ネットワークのブランド「ブーストモバイル」による地上5Gネットワークで使用されていた。しかし、その専用帯域は3GPP(移動体通信の国際標準化団体)の仕様に適合していないため、両サービスにおいては専用端末が必要とされた。それは専用SIMへの交換ではなく、ブーストモバイルが販売またはレンタルする専用端末を意味する。スペースXが新しいチップセットを必要とする理由もここにある。

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また、ブーストモバイルの地上5Gネットワークは、人口カバー率が70%を超え、速い通信速度と安い料金によって一定の顧客を確保していたが、専用帯域使用は都市部に集中しており、その他のエリアはAT&TやTモバイルのローミングに頼っていた。そのため郊外エリアでは原則的に5Gが使用できず、4G/LTEによる通信となった。また、エコスターのMSSサービスも米国内での商用利用は限定的だったといえる。

こうした要因により契約者が増えず、負債が増大したエコスターは、2024年9月に子会社ディッシュ・ネットワークをライバル会社へ売却すると発表したが、合意に至らず頓挫。その後、5億ドル(約750億円)を超える利息の支払遅延が発生すると、公的な周波数帯を有効活用する企業として問題があるとしてFCCの調査対象となり、ブーストモバイルの意思決定も凍結されるという事態に陥った。

その結果として2025年6月には、エコスターがチャプター11(日本における民事再生法)の申請準備に入ったと報じられたが、これを回避するために同社は8月26日、AT&Tに対して周波数ライセンスの一部を230億ドル(約3兆4500億円)で売却。続く9月8日にはスペースXに対し、周波数帯とライセンスの一部を170億ドル(約2兆5500億円)で売却した。この契約によってスペースXは最大85億ドル(約1兆2750億円)を現金、最大85億ドルを株式発行によって支払う予定であり、さらにエコスターの債務に対する2027年末までの利息約20億ドル(約3000億円)を負担することにも合意した。これらの取引によってエコスターは事業を継続し、FCCの調査からも解放される可能性が高い。

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2025年8月26日に実施されたスターシップ(全長121m)の10回目の飛行テストでは、予定されたすべての試験項目をクリア。10月中には11回目、2025年内には12回目の飛行テストが行われる予定(c)SpaceX
2025年8月26日に実施されたスターシップ(全長121m)の10回目の飛行テストでは、予定されたすべての試験項目をクリア。10月中には11回目、2025年内には12回目の飛行テストが行われる予定(c)SpaceX

専用帯域の売却によって自社の5Gネットワークを失ったブーストモバイルは、今後はローミングだけのMVNO(仮想移動体通信事業者)として活路を見出す。その場合、ローミングはAT&TとTモバイルで補完され、さらにV3仕様のスターリンク衛星が配備されれば、その加入者はスペースXの周波数帯を介してDTCサービスにもアクセスできるようになる。今回の両社の契約にはその合意も含まれている。

編集=安井克至

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