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2025.09.29 11:30

アップル「iPhone」が取り逃がした「AI競争」の勝機

Photo by Justin Sullivan/Getty Images

アップルが取り逃がした、iPhoneにおける「AIの切り札」

ここで、アップルを評価しつつ、ティム・クックとそのチームが見逃した「がら空きのゴール」を指摘しておきたい。アップルは一般に「AI」という用語の使用を避けてきたが、グーグルがPixel 8とPixel 8 Proを「初のAIスマートフォン」として売り出し、他のAndroidメーカーも雪崩を打って追随したことで、強まる市場の圧力には抗しきれなかった。

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それでもアップルは、「AI」ではなく、ぎこちない後付け頭字語である「Apple Intelligence」を選んだ。不運だったのは、それ以前のアップルのAIへの向き合い方が、処理を端末内で完結させ、ユーザーデータを安全に保つという路線にあったことだ。Androidが2023年以降に各社横断で広めた「AI○○」という定義・文脈に照らすと、アップルは歩調を合わせにくかったのである。

もっとも、今日AI機能として認識される技術を、アップルは長年にわたって使ってきた。2017年にA11チップセットへ「Neural Engine」(ニューラルエンジン)を導入したのは、最もわかりやすい節目だろう。2017年以降のすべてのAシリーズおよびMシリーズのチップセットにニューラルエンジンが搭載され、Siri、Face ID、Smart HDR、Night Mode、Image Playground、Writing Toolsなど、広範な機能で活用されてきたのである。

アップルが逃した「AI」の瞬間

仮に、これらすべてのサービスを当初から「AI」として明確に打ち出していたらどうなっていただろうか。7年早く「Apple Intelligence」を名乗るだけでなく、2023年以降にAndroid陣営で雨後の筍のように現れたツール群と同じ要領で、AIの名札を付けていたらどうだったか。ハードとソフトの両面で先行していたアップルなら、その存在感と影響力によって、アップルのAIを他社の物差しにできたはずである。

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何よりも重要なのは、スマートフォンにAIが「ある」とはどういうことか、その意味づけをアップル自身が主導できた点だ。その帰結はアップルに利益をもたらし、Androidではなくアップルの定義が標準になっていただろう。ティム・クックは、iPhoneをてこにAIを別方向へ牽引し、未来の運転席にしっかり座れたはずである。

「AI」の2文字の利用をためらったために、帝国は後れを取った。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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