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2025.09.29 11:30

アップル「iPhone」が取り逃がした「AI競争」の勝機

Photo by Justin Sullivan/Getty Images

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スマートフォンの新製品発表が相次ぐ季節である。各社が新しいハードウェアとソフトウェアのアップグレードをひっさげ、自社のプラットフォームへ市場を誘おうとしている。現在、無数のプレスリリースをざっと読む中で、最上位に躍る言葉はただ1つ――人工知能(AI)だ。

スマートフォンにAIを根付かせる競争で、グーグルのAndroidとGeminiが主導権を握り、アップルは追いつこうと苦闘している。ただし、流れを一変させ得る瞬間があったのも事実である。アップルがAIスマートフォンの主導権を握る好機を逃したのは、いつだったのか。

ソフトウェアあるところにAIあり

大手のAndroidメーカーは、AIをブランディングの最上位に打ち出している。サムスンは「Galaxy AI」、オナーは「HONOR AI」、シャオミは「HyperAI」、ワンプラスは「OnePlus AI」といった具合で、この傾向は各社に広がっている。

こうしたAIブランドの下にはAIアプリが積み重ねられ、「AI」の2文字を避けることは実質的に不可能になっている。シャオミの「AI Eraser」「AI Image Expansion」、オナーの「AI Zoom」「AI Translation」「AI Minutes」、ワンプラスの「AI VoiceScribe」「AI Call Assistant」「AI Perfect Shot」など、最新のプレスリリースに目を通せば、AIの名を冠した機能が次々に並ぶことがわかる。

一部のメーカーは、個々の機能名への「AI」付与を控え始めてはいるが、全体戦略としてのAIは維持している。サムスンの「Galaxy AI」は、その最も明確な例である。

AIの希薄化

スマートフォンのマーケティングで、これほどまでに脚光を浴びたプログラミング手法はほとんどない。「AI」という言葉は、コンピュテーショナルフォトグラフィーや機械学習から、敵対的生成手法(GAN)や事前学習済みのトランスフォーメーション型生成ツール(GPT)に至るまで、実に多様な技術を包含している。

これらをひとまとめにしてAIと呼ぶのはマーケティングとしては有効だが、差別化の価値は失われる。おそらくAIと名指しする主な効用は、「そのツールが搭載されている」という安心感を顧客に与える点にあるのだろう。また、生成AIの学習に著作権保護された素材が使われていることをめぐる論争について、消費者側で区別がつかなくなる副作用もある。

かつては「この電話にはAIが入っている」というだけで市場を獲れた時期があった。だが、機能が全般的に進化し(新機能も追加され)、AIの訴求自体が使い古された常套句になりつつあるのではないか。2026年のスマートフォンは、AI技術を活用していても、あえてAIのラベルを遠ざける流れになるのだろうか。

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翻訳=酒匂寛

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