コンピューターサイエンティストは、冗長性によってこれに対処する。すなわち、物理量子ビットのほとんどすべてを誤り訂正に充てるのだ。その結果、数千の論理量子ビット(誤り訂正済みの量子計算要素)を得るために、数百万の物理量子ビットが必要になる。
そしてそれを構築するのは極めて難しい。
したがって、より長寿命で高品質な量子ビットは、短期的に量子コンピューターの実用性を大きく高めることになる。
「私たちは、量子情報を保持する物理系である量子ビット自体に、設計段階で誤り訂正を直接組み込む方法を見いだしました。そうすることで、装置を劇的に、実際に200分の1にまで簡素化できます」とペロナンは言う。
Alice & Bobの最新の量子ビットである「Galvanic Cat」(ガルバニック・キャット)は、同社によれば、量子演算を26.5ナノ秒で実行しつつ忠実度94.2%を維持し、33〜60分間にわたり無傷のまま持続した。
これは量子コンピューターのコストと複雑さを大幅に引き下げ、現実世界での有用性に1歩近づけるはずだ。
Alice & Bobの2030年ロードマップは材料科学でのユースケースを狙っている。材料科学の核心は、分子や固体の内部で電子がどのように振る舞い、相互作用するかを理解することにある。こうした相互作用は量子力学に支配され、粒子数が増えるにつれ古典計算機では正確なシミュレーションが急速に不可能になる。今日の最速スーパーコンピューターでさえ、小さな分子を限定的な精度で近似するのが精一杯である。これに対し、フォールトトレラントな量子コンピューターは量子系をネイティブにシミュレートでき、電子構造や相互作用の精密なモデルを解き明かすことができる。
それは、新型電池、より高効率の太陽電池、より効率的な電力伝送、さらには室温超伝導体の実現といった可能性につながり、古典計算機自体の高速化にも寄与し得る。
量子コンピューターが現実に近づいていることに専門家の見解は一致しているが、依然として多くの課題が残る。
CTOのラファエル・レスカンヌは「道のりはなお長いですが、私たちはすばやく前進しています」と語った。


