私たちの多くは今日、もっと幸せになるために精一杯努力している。自分のためにさらに多くを望み、暮らしを向上させるためにできることをするのはまったく自然なことであり、健全ですらある。
結局のところ、成長しよう、人生を少しでも輝かせようという意欲は人間の最も自然な本能の1つだ。人はあなたの可能性を引き出すとうたう本を読み、メンタルヘルスをうまく管理するために気分を追跡するアプリをダウンロードし、「最高の自分になる」よう啓発するポッドキャストに耳を傾ける。
だが、ある意味で幸福は個人的な目標ではなく文化的な期待に近いもの、つまり私たち全員が常に目指すはずのものだ。よく考えると、あなたが取り入れているウェルネス実践法のほとんどは最終的に幸福の追求に行き着く。
例えば、運動を始めたり、食事や栄養関連のすべてを改善したりするとしよう。表面上の目標はフィットネスにあるように見える。だが結局のところ、多くの人が追い求めているのは理想の体型になる喜びや、変身した自分が褒められることで得られる溢れんばかりの幸福感だ。運動そのものは手段だが、運動が約束する幸せこそが本当の最終目標なのだ。
同じように、人はより多くのことを成し遂げるために生産性を向上させるための裏技や特定の朝の習慣を追い求める。多くの人にとって、それは達成感を味わうスリルであり、自分の人生をコントロールできているという確信から得られる幸福だ。あらゆる自己改善の習慣にも同じことが言える。
巨大化する自己啓発産業
自己啓発産業はこの普遍的な欲求で成長している。調査プラットフォームZipdo(ジップドゥー)による最近の調査では、書籍やアプリ、ポッドキャスト、コース、コーチングにまたがる世界の自己啓発産業の市場規模は2021年には約109億ドル(約1兆6300億円)だった。
米国では自己啓発の本だけで年間12億ドル(約1800億円)以上の売上があり、購入する人の平均年齢は35歳で、60%以上が繰り返し購入している。
米国人の約80%が自己改善を信じており、65%がメンタルヘルス改善のために自己啓発を追求している。最も注目しているのはウェルネス、生産性、精神性などだ。
加えて、自己啓発ポッドキャストは2019〜2022年に35%成長し、アプリユーザーの70%がマインドフルネスや瞑想のツールを好むなど、アプリでも習慣の変化が見られる。幸福と自己成長への投資はジムの会費を払うのと同じくらい一般的になっていることは明らかだ。



