画像が個人データと結び付けられると価値が急騰
文字どおり「今月のスペシャルフレーバー」であるNano Bananaの興味深い点は、顔加工・セルフィー編集といったバイラルなAIアプリのような位置付けで大量のトラフィックを獲得していること、同時にGeminiアプリのアップグレード・新機能という体裁でグーグルのAIプラットフォームにそれらトラフィックが直接流れ込ませていることだ。折しも米App Storeといったアプリストアのランキングでは、ChatGPTなどの生成AIアプリをしのいで、第1位となった。
MIT Technology Reviewは、数億件に及ぶこれらの生体プロファイル1件あたりの価値は15~25ドル(約2200~約3600円。1ドル=147円換算)に達し得ると見積もる。Point Wildは、これが行動データと結びつけられると「1人当たり100ドル[約1万4700円]を超える水準に急騰します」と述べる。
その「サイバーセキュリティ危機」は確かにリスクだ。
未知の攻撃手法による「ゼロデイ」リスク
iCounterのジョン・ワッターズ(John Watters)は「これは氷山の一角に過ぎません」と警告し、「これらの機能が新たで独創的な攻撃手法に組み合わされることが懸念されます。その結果として、未知の攻撃手法(ゼロデイTTP:戦術・技術・手順)が出現し、被害者が次々と生まれる事態になるでしょう」と述べている。
Chromeへの統合とSNS拡散
これはNano Bananaだけの話ではない。その「大幅アップグレード」は、同時期にChromeも「AIで再設計された」ことと重なっている。Surfsharkは「ChromeのGeminiは、ブラウザー統合型AIの中で最も多くのユーザーデータを収集します」と警告している。「利便性は重要ですが、収集されるデータ量をユーザーは認識しておくべきです」とも指摘した。
Point Wildによれば、Nano Bananaは「世界のソーシャルメディアを席巻し、わずか数週間で世界中で2億枚以上の画像を生成しました」。LinkedIn(リンクトイン)で企業向けアバターを作るシリコンバレーのプロフェッショナルから、TikTok(ティックトック)で精巧なファンタジーの人格を作るユーザーに至るまで広がっており、そのプロセスは「危険なほど簡単」なのだ。
完全な機能を使うには、有料のGeminiプランが必要
ここでの代償は、あなたのデータが売られることだけではない。これらのAIアップグレードは無料で利用できるものの、完全な機能を使うには結局有料のGeminiプランが必要だ。
これは消え去ることはない。AIアップグレードや、無料で提供される同種の技術を使うときは、オプトインを行い遊び始める前に、少し立ち止まって慎重に判断すべきだ。いったんデータが取得・保存されれば、その後どうなるのかは必ずしも明確ではない。


