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2025.09.28 16:00

「キモっ」文化が恋人関係に発展する芽を摘む──心理学者が指摘する「2つのパターン」

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1. 人をチェック対象としてみるようになる

イックを探す現代のデートのトレンドはかなり有害である可能性がある。潜在的なパートナーを欠点ばかりの人に変えてしまうのだ。小さな癖や無害な行動が目につくようになり、相手とのつながりを探る前に相手を「失格」にすることがあまりにも簡単になる。

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このような絶え間ない評価によって、理解を深めるよりも表面的な印象を優先するように訓練され、最終的にはデートから発見や好奇心の要素を取り除いてしまう。

加えて、こうしたイックは親密さや傷つきやすさに対するあなた自身の恐れを反映していることもある。相手を拒絶するのは、相手の人となりのためではなく、自分の不快感の引き金になるからかもしれない。そうなると、忍耐や共感は後回しになり、信頼やつながりを生み出すはずの行動そのものが見過ごされたり、誤解されたりする。

確認型とバランス型の調査

専門誌『Psychology, Health & Medicine(サイコロジー・ヘルス・アンド・メディシン)』に掲載された研究では、人が恋人候補を評価する際にどのように情報を集めるかを調べた。研究者たちは、確認しながらの恋人探しとバランスのとれた恋人探しという2つの方法に注目した。

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確認しながらの方法は、最初の印象を補強するような情報を求めるときにとられる。一方、バランス型ではより完全な評価を得るために、肯定的な特徴と否定的な特徴の両方を探す。

その結果、バランス型の方法を取る人は少数であることがわかった。参加者は圧倒的に、リスクとポジティブな面のバランスを取ろうとするより、最初の判断を裏付ける情報を求めていた。

この「確証バイアス」は多くの人が恋人候補について微妙な、あるいはバランスの取れた見方をするよりも第一印象を支持する証拠を探す傾向が強いことを意味する。

私たち自身がつながりを阻む最大の障壁

この傾向は重要な真実を浮き彫りにしている。それは、私たち自身がつながりを阻む最大の障壁であることが多い、ということだ。自分の第一印象を正当化するものだけを求め、不快感を引き起こすものを完全に避けていると、人の深みや複雑さを見逃してしまう危険性がある。

細かくチェックしていくという考え方は、人を進化する存在として見るのではなく過度に単純化してしまう。このバイアスを認識することは、第一印象を超えてじっくりと相手の人となりを見るための第一歩だ。

2. 「素の自分」を見せることを恐れるようになる

周囲の誰もが些細なことで「イック」を覚えるかもしれないという状況にあっては、人は拒絶を避けるために自分を飾り立てるようになる。その結果、浅薄または演技的な交流が繰り返されることになる。この方法ではどちらも本当の自分を安心して見せることができない。

些細な欠点で他人を厳しく判断する方法は往々にして自分を判断する方法になり始める。自分の行動や嗜好、弱さがどのように相手に受け取られるかを過剰に意識するようになる。やがてこれは「本物」への恐れを強める。

このような環境では真のつながりは根付かない。自分の複雑さ・ユーモア・感情を隠して、他人のチェックリストをクリアできるようにしようとする。そして関係を発展させるオープンさそのものが阻害される。

自制心と自己信頼性の関係

専門誌『Frontiers in Psychology(フロンティアーズ・イン・サイコロジー)』に掲載された2023年の研究では、衝動を制御し、誘惑を抑える能力である自制心と、自分自身に忠実であるという感覚である自己信頼性との関係を調べた。

研究者らは、中国の青少年3000人近くを長期にわたって追跡調査し、自制心と自己信頼性の両方を複数回測定した。これらの特性が関連しているかどうか、また、一方の変化が他方の経時的変化にどのように影響するかを確認するのが狙いだった。

調査の結果、自制心が高い青少年ほど、自己信頼性が高いと報告する傾向があることがわかった。

基本的にこれは相互の関係だった。自分をコントロールすることは個人がそのままの自分として行動することを助け、一方、自己信頼性があると自己調整能力を強化することがわかった。

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翻訳=溝口慈子

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