経営・戦略

2026.02.12 11:15

デベロッパーよりソフトが先行 Sumuが目指す循環型ビジネス

「外資系ホテルの設計をすると、100近い設計条件が課されます。各部屋にこれが必要、あれが必要と積み上げていくと、結局どこも同じような建物になってしまう。それが本当に21世紀の暮らし方に合っているのか、ずっと疑問でした」

advertisement

建築家・永山祐子氏が語ったこの言葉は、従来の不動産開発が陥っている根本的な課題を端的に表している。供給者目線で「機能」を積み上げる従来手法と、利用者の「体験」から逆算して空間を設計する手法——その違いは、まさに今日本が課題としている「サービスデザイン」の考え方そのものだ。

経済産業省が2020年に発表した『サービスデザイン方法論』では、「利用者の体験価値を起点に、サービス提供に関わる人・もの・仕組みをデザインする手法」と定義されている。東京都も2024年、行政サービスの変革にこの手法を本格導入した。そして今、この官民挙げての変革の波が、最も保守的とされる不動産業界にも押し寄せているようだ。

今年5月にローンチされたAirbnb Partnersによる新たなアパートメントホテルブランド「Sumu powered by Airbnb Partners(以下、Sumu)」は、空間やオペレーション、概念、デザインといった「ソフト」が先行してビジネスを構築していこうとしている。その新たなチャレンジに乗ったメンバーは、錚々たる顔ぶれだ。

advertisement

「ウォーターフォール型」開発から「アジャイル型」開発へ

Sumuの最大の特徴は、従来の不動産開発プロセスを完全に逆転させた点にある。通常、不動産開発では土地と建物を握るデベロッパーがブランドを所有し、運営会社に委託する「ハード主導」のモデルが主流だった。

しかしSumuでは、空間/ビジネスプロデュースを行うADDReC、運営を担うカソク、コンテンツキュレーションはCCC、ブランディングを手がけるWhateverといった「ソフト」企業群が先行してブランドを構築。その後に大和ハウス工業をはじめとする複数のデベロッパーが、そのブランド体験を実現する建物を建設するという、まさに「ユーザー体験起点」のアプローチを採用している。

完成品を作り込む前に、ユーザーの真のニーズを検証し、小さく始めて改善を重ねる——サービスデザインにおける「プロトタイピング思考」とも言えるこのプロセスを、Sumuは2025年12月オープン予定の「0号店」(東京・東上野)で実践しようとしている。

「通常のブランディングなら、ある程度完成した商品やサービスがあって、それをどう見せるかを考えます。でも今回は違った。まだ何もない段階から参画し、ビジネスストラテジーとデザインが密接に関わりながら形をつくっていく——そんなプロジェクトはめったにありません」

ロゴデザイン・ステートメントコピーを手がけたWhateverのCEO・富永勇亮氏のこの証言は、従来の「ウォーターフォール型」開発から「アジャイル型」開発への転換を物語っている。

次ページ > Airbnbと共に考え続けてきた理想的な宿泊体験

文・写真 = 千吉良美樹

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事