経営・戦略

2026.02.12 11:15

社会的インパクトを共創で実装する Sumuが変える不動産開発の形

循環型価値創造と次世代への継承

福島氏のビジョンには、イノベーションをして終わりではない、「循環」への思いがある。

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「ホテル運営で得た売上や、それによって利益を得た企業には、Sumuというプラットフォームでチャレンジをしたい地域の企業やスタートアップに再投資をしてもらうようなしくみをつくっていきたいと考えています」(福島氏)

この循環型モデルの根底にあるのは、1社単独、あるいは1つの業界だけでは解決できない課題が増えているという現実認識だ。

「建築、不動産だけでは、解決できないことが増えてきています。2024年の能登半島地震では、それを痛感しました。東日本大震災の時は建築業界のさまざまな企業が協力して復興に注力できた。でも、あれから10数年経って、同じようには進められなくなっている。だからこそ、業種を超えた共創の仕組みを平時からつくっておく必要があるんです」(福島氏)

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Sumuが構想するのは、旅と暮らしの境界を溶かす多機能な空間だ。平時は観光客が利用し、災害時には被災者の避難所になる。そんな柔軟な「居場所」が各地にあれば、日本で過ごす心理的安全性を高められる。「そういう未来を、次の世代に渡したいと思っています」と、彼らはその思いを語る。

「建物は完成したら終わりじゃない」

Sumuの理念に共感し、プロジェクトに参画している建築家・永山祐子氏は、従来の不動産開発への問題意識をこう語る。

「近年増えている外資系ホテルの設計をすると、多くの設計条件が課されます。各部屋にこれが必要、あれが必要と積み上げていくと、結局どこも同じような建物になってしまう。それが本当に現代の暮らし方に合っているのか、ずっと疑問でした。

建物は完成したら終わりじゃない。むしろ、後から別の人がリノベーションすることも想定して設計すべきです。私の建築を誰かがリノベーションしたらどうなるか、想像するだけでワクワクします」(永山氏)

whateverが提案した可変式の壁など、さまざまなアイデアが進行しているSumuの部屋
whateverが提案した可変式の壁など、さまざまなアイデアが進行しているSumuの部屋

国土交通省のガイダンスは、社会的インパクト不動産の実現には「事業期間中に社会情勢と社会課題が変化すること、事業者が変わることも視野に、その継続性・柔軟性等を確保しつつ、社会の変化に敏感かつ柔軟に対応していくことが必要」と述べている。

Sumuが体現しようとしているのは、まさにこの「変化への柔軟性」だ。固定から可変へ、所有から利用へ、そして競争から共生へ──人口減少時代の日本において、従来の大量生産・大量消費型のビジネスモデルは限界を迎えている。しかし、三方良しの思想を現代に蘇らせ、アジャイルの手法で社会的インパクトを最大化する。そんな新しいビジネスモデルに、日本の不動産業界の未来が見える。

Sumuのロゴは、文字一つひとつに小さな足が生えて、自由に動き回るデザインになっている。「住むと旅するを自由に満喫できるホテルだから、ロゴも自由に住んだり旅したりするんです」と、ロゴ開発を手がけたWhateverの川村真司氏は語る。

その小さな文字たちが自由に歩き回るように、日本の不動産業界もまた、社会的インパクトを軸にした新たな一歩を踏み出そうとしている。

文 = 千吉良美樹

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