経営・戦略

2026.02.12 11:15

社会的インパクトを共創で実装する Sumuが変える不動産開発の形

Sumuが画期的なのは、この理念をゼロから実装しようとしている点にある。

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Sumuの事業構造は、従来の不動産開発とは根本的に異なる。彼らが設計したのは、①不動産を所有するオーナー・デベロッパー、②運営を担うカソク、③ブランドを管理するSumuという3者が意図的に「三すくみ」の関係を築くモデルだ。

「ブランドライセンスを別会社化することで、従来の『デベロッパー>オペレーター』という一方的な力関係をなくし、三者が常に対等なパートナーとして議論できる構造を作りました。この仕組みがあるからこそ、目先の利益や効率だけにとらわれず、『利用者の体験価値をどう最大化するか』『地域にとってどんな価値を提供できるか』という本質的な問いに向き合い続けることができるのです」(福島氏)

この日本古来の「三方よし」の考え方が、国土交通省のガイダンスでも「社会的インパクト不動産」の思想的基盤として言及されている。

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ソフトウェア開発の手法を不動産に持ち込む

Sumuのもう一つの特徴は、ソフトウェア開発で主流となった「アジャイル」の手法を不動産開発に適用している点だ。従来の不動産開発では、土地と建物を握るデベロッパーがブランドを所有し、完成品を運営会社に委託する「ウォーターフォール型」が主流だった。

しかしSumuでは、空間・ビジネスプロデュースを行うADDReC、運営を担うカソク、コンテンツキュレーションを手がけるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、クリエイティブを担当するWhateverといった「ソフト」企業群が先行してブランドを構築。その後に大和ハウス工業をはじめとするデベロッパーが建物を建設し、運用しながらアップデートを重ねていく。

蔦屋書店のコンシェルジュがキュレーションしたCultureの部屋
蔦屋書店のコンシェルジュがキュレーションしたCultureの部屋

運営を担うカソク代表・新井恵介氏は、このアプローチの意義をこう語る。

「私たちが運営するアパートメントホテルのキッチン利用率は65%。ホテルを利用してくれている半数以上のゲストが、実際に部屋で料理をしています。こうしたリアルなデータを基に、従来のホテル像を根底から見直し、本当に求められる空間を設計していく。完成品を作り込む前に、ユーザーの真のニーズを検証し、動かしながら改善を重ねる──これがSumuのアプローチです」(新井氏)


このユーザー起点のアプローチを可能にしたのが、Airbnbというプラットフォーマーならではの視点だ。Airbnb Japan 執行役員 ホームシェアリング事業統括本部 本部長の森厚雄氏は、市場の変化をこう分析する。

「たとえば訪日外国人の旅行スタイルは『少人数・短期滞在』から『グループ・長期滞在』へと根本的に変わっています。東京では大人数が滞在できる部屋の需要が急増し、稼働率も非常に高いところが多い。同時に世界中で地域性や人の温かみがある、心地よい居場所になるような建物に人々が惹かれるようになってきていると感じています」(森氏)

前出の新井氏によれば、東京には22万室以上のホテル客室があるが、3名以上のグループが一緒に泊まれる部屋はわずか2%程度。この需要と供給のギャップこそ、Sumuが狙う市場機会だ。

200社超のエコシステムが生むオープンイノベーション

さらにもう一つ、Sumuの特異性を後押しするものがある。Airbnb Partnersという200社以上が参画する巨大なエコシステムだ。このビジネスコミュニティには、ホテル運営のスタートアップから、CCCのようなカルチャーコンテンツのプロフェッショナルまで、多様な専門家が集う。

「それぞれが得意領域の知見を持ち寄り、掛け合わせることで、私たちはまだ誰も見たことのないような体験価値を生み出せると信じています。今後は、単に宿泊施設を増やすだけでなく、このビジネスエコシステムを基盤に、地域に住む人々の暮らしも豊かにする『まちづくり』や、万が一の際に地域を守る『防災拠点』としての機能、心身の健康を育む『ウェルビーイング』の仕掛けなど、より広い領域へと事業を展開していきます」(福島氏)

すでに2026年2月15日オープン予定の東上野の0号店に加え、業平、台東区寿三丁目、新宿5丁目、新宿御苑の物件が2026年秋以降のオープンに向けて着工している。

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文 = 千吉良美樹

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