出社回帰の波、オフィスのAI変革──。働き方の変化が加速するなか、働く場を空間から問い直す「ワークプレイスの再発明」が世界各地で始まっている。
9月29日発売の『WORK MILL with Forbes JAPAN』10号は、Zoomのシリコンバレー本社とロンドンのエクスペリエンス・センター、ドイツの巨大メディアAxel Springer本社など、世界5カ国10社の最新オフィスを取材。
サンフランシスコでは、2025年最大級とされるIPOで注目を集めたデザインソフトの人気企業「フィグマ」の本社を訪れた。そこは、足を踏み入れただけで同社の世界観を全身で体感できる、フィグマの「体験空間」だった。
デザインの共同編集プラットフォームを展開する米企業フィグマは、AIを搭載したサービスで業界と投資家の期待を集め、7月末にニューヨーク証券取引所に新規上場を果たしたばかりだ。
「想像と現実のギャップをなくす」
上場直後、共同創業者兼CEOのディラン・フィールドは、2012年の創業時に掲げたビジョンを改めて宣言した。
そんな未来を先取りする企業が本拠を構えるのは、シリコンバレーではなく、金融街に隣接するサンフランシスコの一等地。鋭角三角形の外観が目を引く古いビルに、2年前から入居する。1906年の大地震で廃墟となった街に、サンフランシスコ市長も務めたジェームズ・D・フェランが建てた由緒ある建物だ。
一世紀の時を刻んできたアールデコ様式のエレベーターで、フィグマが入居する階へ。そこには打って変わってカラフルな空間が広がっている。レトロな趣を残すタイル張りの床に、色鮮やかな家具とモダンアート。歴史と現代が絶妙に融合し、独自の世界観を形成している。
「(CEOの)ディランがこの建築にひと目惚れして、本社移転を決めました。自然光をたっぷり取り込む美しい窓、アンティークタイルの床、細部まで意匠を凝らした内装など、歴史が紡いできた魅力にあふれています」
不動産とオフィス運営を担当するグローバル副社長のキャスリン・アシュクラフトが、この場所を選んだ理由を打ち明ける。築年数が古くても骨組みが頑丈で、床面積が広いことも決め手となった。
「社員数が増えるたびに、テトリスをするように机の配置に頭をひねってきた。これだけの広さがあれば、もう大丈夫」
アシュクラフトはそこに色とアートを加え、オフィスに彩りと活気をもたらした。エネルギーが湧き、クリエイティビティが刺激される空間を目指したという。



