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2025.09.28 17:00

ウイスキーブームは終わったのか? 完全に失速したわけではないが、向かい風が続く 米国

5PH / Getty Images

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ウイスキー産業はブームから不振へ転じたのか。BBC、Men’s Journal、Lexington Herald‑Leader などの最近の見出しは、そのように示唆している。とはいえ、市況を最も即時に反映する指標であるディプリーション(卸売業者から小売業者への実売)を精査すると、より複雑な実態が見えてくる。以下では、足元の米国ウイスキー市場の動向を掘り下げ、とりわけバーボンを中心に、アメリカン・ウイスキーの将来に何を意味するのかを検討する。

米国市場データを基にしたウイスキー販売の実態

SipSource(シップソース)はWine & Spirits Wholesalers Association(WSWA)の市場情報サービスだ。WSWAはアルコール飲料の卸売業者を代表する業界団体である。SipSourceのデータベースは、ディストリビューターのディプリーション・データ、すなわち卸売業者から小売業者への実際の販売を集計したものに基づいて構築されている。

WSWAによれば、SipSourceは「全50州を網羅し、きめ細かなSKUおよび店舗レベルの可視性と比類ないチャネル区分を、VIPのiDIGプラットフォームを通じて提供する。レポートと予測は、スリーティア・システム(製造・卸・小売の三層構造)全体にわたり、カテゴリー、クラス、価格帯のトレンドを追跡し、計画と実行を支援する」という。

飲料市場のトレンドを評価することが難しい一因は、データがサプライチェーンのさまざまな段階、すなわち生産者、輸入業者、卸売業者、小売業者によって収集されていることにある。さらに、すべての調査がすべての販売チャネルを網羅しているわけではない。

卸売から小売への出荷実績が市場トレンドを示す指標

究極的に、トレンドを最も正確に示すのは消費者が実際に購入した数量である。サプライチェーンの上流にさかのぼるほど、在庫の変動の影響を受け、ブレが大きくなる。

現時点で、小売、飲食店、メールオーダーを含む全チャネル横断のアルコール飲料の消費者購買を合算した総合指標は存在しない。ただし、特定セクターを追跡する団体や、調査データに基づいて需要を推計する団体はいくつかある。

卸売から小売への出荷を測定する SipSourceのデータは、歴史的に見て市場トレンドの最も正確な先行指標であることが示されてきた。2025年7月までの直近12カ月の SipSourceデータは、米国のウイスキー市場についての複雑な様相を示している。

2025年7月までの販売数量と売上高はともに減少

2025年7月までの直近12カ月で、米国のウイスキー販売は数量ベースで4.9%減、売上高ベースで5.1%減となった。売上高の減少率が数量よりやや大きいことは、プレミアム価格帯のウイスキーの落ち込みがやや大きかったことを示唆する。

アメリカン・ウイスキー(バーボンを含むアメリカ製のウイスキー)は米国のウイスキー総販売の53.7%を占めた。その販売トレンドは市場全体と似ていて、数量で4.3%減、売上高で4.1%減であった。

もっとも、アメリカン・ウイスキーの場合、カテゴリーとしては市場全体より善戦しており、プレミアム価格帯のアメリカン・ウイスキーは最下位価格帯の商品よりわずかに良好であった。要するに、全体のトレンドはマイナスであるものの、プレミアム化の追い風は依然として(わずかではあるが)働いていたということだ。

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翻訳=酒匂寛

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