バーボンは在庫過剰
次に、最近の「悲観一色」の記事の主題となっているバーボンに目を向けよう。バーボンは米国のウイスキー販売の31.4%を占め、アメリカン・ウイスキー販売の約55%に相当する。2025年7月までの直近12カ月では、バーボンの販売数量は1.5%減、売上高は1.4%減であった。
販売数量1.5%減で崩壊とはいえない水準
これは、新型コロナのロックダウン期にバーボン販売が二桁成長していた熱狂的な時期からは大きな変化である。しかし、1.5%の減少は「崩壊」と呼ぶには当たらない。現在のトレンドがより終末論的に見える一因は、バーボンの生産が大幅に拡大してきたことにある。
2019年から2024年にかけてケンタッキー州の樽在庫は増加
2019年から2024年の間に、ケンタッキー州の樽在庫は986万樽から1420万樽へと増加した。米国全体のアメリカン・ウイスキーおよびバーボンの在庫増加に関する全国統計は存在しない。もっとも、ケンタッキー州はアメリカン・ウイスキーの85〜90%、バーボンの95%以上を生産しており、生産動向を示す代理的な指標としては適切だ。
需要の伸びよりも生産拡大とプレミアム化が逆風に
同期間に、需要は数量ベースで16%、売上高ベースで30%増加しており、カテゴリーにおける顕著なプレミアム化を示している。端的に言えば、現在の逆風は、需要崩壊ではなく、生産過剰と過度に積極的なプレミアム化が重なったことに起因している。
仮に需要が伸び続けていたとしても、業界は相当な在庫超過に直面していたであろう。需要の弱さが供給過剰の問題を一段と悪化させた格好である。
テネシーやブレンデッドなど主要カテゴリーの大幅減少
他の多くのウイスキー・カテゴリーのトレンドも同じ方向を示したが、下落幅はより大きかった。
販売構成比で8.9%を占め、バーボンに次ぐアメリカン・ウイスキーの主要カテゴリーであるテネシー・ウイスキーは、数量で9.0%減、売上高で9.2%減であった。アメリカン・ブレンデッド・ウイスキーは数量で9.4%減、売上高で13.0%減であった。
かつてアメリカン・ウイスキーの中で最も成長の速いカテゴリーだったフレーバード・ウイスキーは、数量で6.3%減、売上高で8.4%減、ライ・ウイスキーは数量で7.0%減、売上高で5.9%減であった。
ブレンデッドおよびフレーバードの高価格帯製品は最も顕著な落ち込みを示し、これらのカテゴリーではプレミアム化が機能していないことを示唆する。テネシー・ウイスキーも同様の傾向を示したが、高価格帯の減少はそこまで顕著ではなかった。
これら3カテゴリー、特にフレーバードとブレンデッドは、消費者層が相対的に若年層へ偏っている。これが数量と売上高のより大きな落ち込みを説明する可能性がある。
唯一成長するアメリカン・シングルモルト
唯一の例外は「アメリカン・ウイスキー(その他)」であった。同カテゴリーは数量で0.6%増、売上高で5.1%増となった。とは言え市場全体に占める比率は、数量・売上高ともに約1%にすぎず、その堅調さが全体のトレンドを大きく動かすことはない。
SipSourceの分類において、このカテゴリーはその他のアメリカン・ウイスキーを包含する総称であるが、実態としてはアメリカン・シングルモルト・ウイスキーが大半を占める。規模は非常に小さいものの、成長している唯一のウイスキー・カテゴリーはアメリカン・シングルモルトだと言ってよい。


