仕事量が限界を超えるとき
筆者は社会人になりたてのころ、従業員が我先にと仕事を奪い合う職場で働いたことがある。従業員は望む分だけ、つまり自分の限界まで働くよう推奨されていた。当時は、ワークライフバランスとか、業務範囲の線引きなどという発想はなく、誰もが先を争うように働いていた。やればやるほど良い、というわけだ。疲労困憊する環境だったが、さらに困ったのは、自分がどう評価されているのかを知っている人が誰もいなかったことだ。
筆者はのちに起業したが、従業員を少しずつ増やしていく中で、1つ確信していたことがあった。仕事に期待されることを明確にしたいと思っていたのだ。また、業務範囲を線引きしてそれを守るよう、従業員に奨励した。
静かな崩壊を招くのは、手に負えないほどの業務量と不明瞭な期待だ。そうした問題に対処するためにリーダーがまずやれるのは、誰が何に責任を持つのかをはっきり伝えることだろう。
今では、AIを活用したプロジェクト管理システムが、全員の認識を一致させる上で役立つツールとなっている。例えば、Asana(アサナ)の「AI Studio」を使えば、会議の議事録から、皆がやるべきことを抜き出すことが可能だ。カスタム連携を通じて、フォローアップや、納期を設定してタスクを自動で割り当てることもできる。
業務管理ツール「ClickUp」は、AIを活用して業務量のバランスを調整し、誰かに過剰な負担がかかる状態をなくすとともに、負荷オーバーの人と、余裕のある人が誰なのか、マネージャーがひと目でわかるよう可視化する。
タスク管理ツール「Wrike」なら、1人に過剰な責任がかかっている場合に、プロジェクトが危機的状況にある、と通知してくれる。
より意識的にアプローチすることで、従業員は自らの業務範囲を守ることができる。そして、自分は期待を満たしている、という自信をもって、仕事から離れられる。


