「もう、能登瓦を生産する業者はない」
公費解体で回収された能登瓦は指定業者によって粉砕され、CACLがそれを購入・保管。能美市障害者就労支援施設で梱包される。LIXILはそれを技術によって建材に製造。そしてアップサイクルされた“能登瓦textone”はさまざまな建築物やインテリアに活用されることを目指す。
さっそく永山祐子建築設計では、計画中の大型商業施設の内装に利用することにしている。さらには「この温かみのある赤土の色は商業施設に関わらず、住宅、ホテルなど人が長く滞在する場所にも使えると思います。外部にも使える耐久性もあるので使い方の広がりがあります。小松市の粘土を使った能登瓦の形は変わるけれど、まちの記憶、ストーリーが素材と共に共有されることを願っています」(永山さん)。
珠洲市の泉谷満寿裕市長は「ありがたい」と目を細める。
「実はもう、能登瓦を生産する業者はないんです。黒瓦はこれから失われていく一方になる。だからこそ、こういった形で生き返るのは、ありがたいし、うれしい」
冒頭の谷内前さんも口をそろえる。
「だからこういう話が来たときに、ああ、うちの黒瓦も少しでも使ってほしいと思って、それでハイ、わかりましたって」
〈能登はやさしや土までも〉
その穏やかな能登瓦の土の表情が、これから、さまざまな場所を温かく包む。


