経済・社会

2025.09.30 14:15

能登のシンボルを「復活」させる 起業家とLIXIL、その技術と建築家

これは“新しいリサイクル”だ

路面材などに利用される、廃プラスチックに廃木材を融合させた「レビア」などアップサイクルによる新素材開発に積極的に取り組むLIXILは、textone(テクストーン)という自然由来の素材を開発していた。

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セメントとパルプをベースに、竹や籾殻の炭、鉱石などを独自の配合技術で均一に混ぜ合わせ加圧成形。材料のうち約15%は、古紙や、再利用の拡大が期待される籾殻などを活用、従来の石材やタイルよりも軽いことも特長だ。しかもきちんと耐性もある。

「textoneに黒瓦を混ぜると面白い素材感になるって思いました。お願いすると、すぐにサンプルを作ってくれました」(永山さん)というように、LIXILの技術陣は驚くべきスピードで粉砕された黒瓦を混ぜ込んだtextoneに改良を重ねていった。

そして出来上がったのが、このオレンジ色の能登瓦仕様textoneだ。

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〈新素材 textone能登瓦仕様〉

材料

水、セメント、パルプ、黒瓦(粉状にしたもの)

工程

①材料を水に混ぜ合わせる。水を除く材料のうち黒瓦の比率は企業秘密

②プレス機で板状に成形し、硬化させる

③3040×940の板ができる

・丸ノコなどで切断、加工が可能

ただ黒瓦はそもそも重いものなので、扱いに苦労したという。

「従来のtextoneと違って“異物”を混ぜ込んでいる感じがありました。というのは、黒瓦の粒が重いので、混ぜ込むと中に沈んでしまって、成形しても表面に出てこない。黒瓦を入れているのか、その質感が見えないんです。そのため苦労したのは、瓦の粒感(りゅうかん)が壁面に出てくるよう、どこまで表面に磨きをかけるか。そして、どれくらいまで大きな粒として混ぜられるか。

現在は7ミリくらいの粒が入っていますが、セメントの場合は数ミクロンの粒度ですから、ミリのものを原料として混ぜ込むというのは挑戦でした。強度を保ちつつ、かつ遠くから見ても美しい壁模様に見える粒の大きさにする。これまでの研究やノウハウがなければ達成できなかったと思います」(LIXILHOUSING TECHNOLOGY 商品本部技術研究所 材料成形グループリーダー 首藤祐樹さん)。

「LIXILにとって、これは“新しいリサイクル”の姿を発見した思いです」

と語るのは羽賀豊常務。

「さまざまな方々が住んでいた家の屋根の黒瓦由来の原料をお預かりし、それが新素材として生まれ変わる。“私の家”の記憶を受け継ぎ、能登の伝統と文化を汲んだtextoneの誕生が、震災復興の一助になることを願っています」

通常は構想から製品化まで3年はかかるというtextone開発。今回はほぼ1年でここまでできたという。これまでの蓄積と能登への思いが、難しい開発の壁を超えた。

次ページ > 「もう、能登瓦を生産する業者はない」

text by Tomoya Tanimura

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