転機は29歳で参加した映画『約束のネバーランド』(20年公開)。VFXスーパーバイザーとして初の大規模作品だった。「(広告の現場に比べて)大人数のチームだからこそ到達できる高みがあることを実感しました。ただ、今の日本では制作メンバーの人生や成長にまで責任をもつ体制を整えにくいこともわかりました。こうした業界の課題を解決するには、自分で責任をもてる大きなチームをつくって成功事例をつくるしかない」。その覚悟がKASSEN設立へとつながった。
KASSENが力を入れているのは、社内外で垣根を越えて協働すること。VFXだけでなくディレクションや編集といった複数のセクションを社内に擁し、皆がプロジェクトの初期段階から並走する。また、制作中のオリジナル劇場アニメ『KILLTUBE』(26年公開予定)では、他社とひとつのチームをつくり企画段階からポストまで議論を尽くしてきた。
「近年、ポケモンやスーパーマリオなど、日本発のIPがハリウッドで大きな成功を収めていますが、僕はそれらを観て『なぜ日本で同じクオリティの作品を生み出せないのか』と強く反省しています。社内外問わず多くの仲間と支え合って共に戦い、“歴史を変える仕事”ができる環境をつくりたいです」
おおた・たかひろ◎1989年生まれ。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒。アニメやCMの制作会社を経て、VFX業に転身。オンラインエディターとして多数のTVCMやMVのVFX、仕上げに携わる。2020年12月にKASSENを創業。

