AGC──有機と無機の融合が生む光学的完璧性
AGCの赤外線カットフィルター(IRCF)は、2010年のiPhone 4からすべてのiPhoneに採用されている。一見すると単純な「赤外線をカットする」機能に思えるが、その実態ははるかに複雑だ。
同社の強みは、ガラスという無機材料とポリマーという有機材料の両方を自社で開発・製造できる点にある。「有機も無機も持っている材料メーカーは、あまりない」と技術者は語る。材料自体が赤外線を吸収する特性を持ち、さらにナノメートル単位の多層膜コーティングを施すことで、可視光の透過率を最大化しながら赤外線を確実にカットする。
暗所撮影性能の向上という要求に対しても、「通したいところはなるべく光を通し、カットしたいところは確実に遮断する」という相反する要求を、材料とコーティングの組み合わせ設計で実現している。メーカーごとに異なる「透過させたい光の領域」への細かな要求に応えることで、iPhoneカメラ特有の色再現を支えている。
京セラ──1600度の炎が生む永遠の信頼性
京セラのファインセラミック基板は、15年以上にわたってiPhoneカメラモジュールの基盤を支えてきた。1970年代のIBMコンピュータ向け多層基板から始まった同社の技術は、今やiPhone 17 Pro Maxには6個ものセラミック基板として実装されている。
セラミックの特性は明確だ。1600度で焼成された材料は水分を吸収せず、経年劣化がほぼない。「一度焼いて固まったものは、それ以上水分も吸わない」という長期信頼性は、2〜3年使用されるiPhoneにとって理想的だった。
しかし、真の価値は製造プロセスにあった。柔らかい状態のセラミックシートに穴を開け、回路を印刷し、11層もの構造を積層してから焼成する。この工程により、表にも裏にも側面にも、さらには層の中にも自在に配線を通すことができる。
「3D設計で配線を自由に取り回すことができる」
この自由度が、小型化と高性能化を両立させる鍵となっていた。
ソニー──40年の歴史が紡ぐ共創の歴史
ソニーとアップルの関係は1983年、初代Macintosh向けフロッピーディスクドライブから始まった。40年以上の歴史を持つ両社の関係は、2011年からのイメージセンサー供給により新たな段階に入った。
iPhone 17に搭載された48メガピクセルのイメージセンサーは、単なる光電変換素子ではない。積層型構造により、センサー内部にAI処理用のロジック回路を内蔵し、「センサーレベルでAI処理を最適化する設計」を実現している。
ソニーの強みは、多様なアプリケーション展開による技術の相乗効果にあった。車載向けで開発した高ダイナミックレンジ技術をモバイルに応用し、モバイルで培った小型化技術を他分野に展開する。この技術循環が、「どれだけ小さい中に同じような機能を入れられるか」という究極の課題への解答となっていた。
技術者への追加取材で明らかになったのは、アップルとの協業の深さだった。
「お互いの得意分野をよくわかっている」という言葉どおり、センサー内での処理とISP(画像処理プロセッサ)での処理の切り分けを、両社で議論しながら決定しているという。デモザイク処理のような基本的な画像処理でさえ、最適な分担を模索し続けている。


