その料理を一言で表現すれば「モード」だといえるかもしれない。とても洗練されている。常に進化する美しさや美味しさ、冒険心やロマンに満ちている。
高級食材に頼るのではなく、誰も考え付かないような、野菜と魚や肉、野菜同士の組み合わせを考えだし、それを一つの世界観として皿のうえに構築するのである。加えて、遊び心があふれている。例えばブリのマリネとトンブリをブリオッシュでサンドするなど、“ブリ”の3段重ねだ。そんなユニークネスが心に刺さる。

料理をするときに、何を一番大切にしているかを聞くと、「素材の持ち味を大切にすること」という。ただそれは、一般に想定されるようなものではない。
「ピーマンならピーマンで深層部にある味わいを抽出するということです。ただ切って焼くというようなことはまずしないんです。素材の味のレイヤーの層を取りだすというか……。それを、同じようにして取り出した別の素材のレイヤーと合わせる。すると口の中に入れたときには、美味しさと同時に、これは何の味だろう、香りだろうという、複雑な余韻が長く続く。もしくは独創的な香りに支配され、その後にインパクトのある旨みが続く場合もある」
このように、まずもって出会えない驚きに満ちた、多皿メニューで構成されているのがラシームである。
ところで、高田氏は地球環境への配慮、とりわけフードロスに対して非常に敏感である。彼にとってそれは声高に主張するものではなく、料理人としてごく自然に行っている営みだ。
例えば、魚は一尾を余すことなく使い切り、必要があれば骨や肉も二次的に活用する。野菜は端材を出さないよう飾り切りを避け、肉も熟成させると廃棄が増えるため、可能な限りフレッシュな状態で扱う。こうした姿勢は「環境対応のために特別に工夫している」というよりも、日々のオペレーションに組み込まれた習慣に近い。
彼の考えはシンプルだ──ゴミはゴミである。まずは出さないことこそが最も大切であり、すべての店舗が本気で「極力廃棄を出さないオペレーション」を構築し、遵守することで大きな効果が生まれるはずだと語る。それは、考え方ひとつで現場を変えることができるという信念でもある。
今後の夢や目標は、国内外、人との接点をもっと持つことだという。それは例えば支店を出すことかといえば、ちょっと違う。例えばホテルやレストランの朝食だけをプロデュースするということもその一つ。これはなかなか斬新で、今まで誰もやっていないだけにインパクトも大きいだろう。
他には、冷凍やチルドなどでプロダクトを開発し輸出する構想もある。解凍したり温めるだけで「ラシーム」の味が再現できる商品をつくれれば、人手不足や技術不足に悩むどの国の飲食業界にとって、合理的なソリューションとなり得る。
実際に自分が現場で手を動かすだけでなく、プロダクトに仕事を担わせる。いわばデザイナーやプロデューサーとしての役割を広げていきたい考えだ。一シェフとしてだけでなく、広くクリエイターとして食を俯瞰して捉えることができれば、可能性は無限に広がるのである。


