小学校中学年の頃には、フランス料理のシェフになりたいと決めていたという。奄美大島に生まれた高田裕介氏は、当時まだ食べたことがなかったフランス料理の世界に憧れ、その道を歩き出した。
専門学校を卒業後、大阪のフレンチレストランで9年修業を積んだのち、もっと上を目指そうとフランスへ。三つ星店などで研鑽を積み、帰国。子供の頃の夢を叶え、2010年にはオーナーシェフとして「ラシーム」を開いた。
開店直後は集客に苦労したというが、直近、2025年の「世界のベストレストラン50」で見事に44位にランクインした。世界に何百万件とレストランがあるなかでの44位である。しかも「ラシーム」は大阪に位置する。日本第2の都市ではあるが、経済格差はGDPにして1.8倍と言われており、そのハンディは思っている以上に大きい。ベスト50に入った日本の4店のレストランのなかで、唯一の地方都市店である。
大阪を地方都市と言っていいかどうかは、意見のわかれるところだろうが。この快挙について高田氏に聞いてみた。
「2022年に初めて41位にランクインして、その時は本当に驚きました。天変地異かと。それ以前には海外とのコラボレーションディナーなども随分やりましたから、それで名前が多少売れたのかもしれません。でもこの2年は一切せず、自分の店に集中していたので本当に不思議で。いらしてくださった方々のよき思い出に残ったのなら、こんなに嬉しいことはありません」

現在ラシームは4テーブルと個室で夜一回転、約半数がインバウンド客で埋まっているという。ギラギラしたフーディは少なく、落ち着いたお客様が多いそうだ。
「ベストレストラン50」は評議員が実訪した店にしか投票できないシステムである。票数や点数化は極秘事項として明かされていないが、席数を考えれば、訪れたゲストの多くが票を入れたのではないだろうかとしか考えられないほどだ。それほどラシームの料理は一度食べると、印象に残るものなのだろう。



