マーケティング

2025.09.27 16:15

インド鉄道がチケットを「宝くじ化」無賃乗車への対抗策に

インド鉄道は「Lucky Yatra(ラッキーな旅)」を実施した

インド鉄道は「Lucky Yatra(ラッキーな旅)」を実施した

テレビCMなどの広告クリエイティブを企画する際は、最初に「What to say」(何を言うべきか=メッセージ)を決めて、それが有効に伝わるための「How to say」(いかに言うべきか)を考えるの方法が基本だと言われてきた。

例えば、ペットボトルのお茶のCMであれば、「What to say」として茶葉の種類、飲んだ時の爽快感、飲むのに相応しいシチュエーション、パッケージの特徴、飲む人の特性など、様々なポイントが考えられる。広告クリエイティブを企画する前に、アンケート調査やグループインタビューなども活用して、最も効果的と思われるポイントに絞って、「How to say」を考えていく。

しかし、昨今のカンヌライオンズ受賞作には変化がみられる。従来の基本プロセスとは関係なく、解決策の見えない課題を一発で何とかするような”突飛“とも言えるアイデアを発案し、実行して成果を挙げている事例がが少なくない。いわゆる“広告クリエイティブ”ではなく、“課題解決一発アイデア”とでも呼べそうな事例だ。

その典型的な事例が、インド鉄道による「Lucky Yatra(ラッキーな旅)」である。この事例は、6月に開催されたカンヌライオンズ2025でPR部門グランプリ他を受賞した。

贈賞式会場外の階段でも、興奮冷めやらず喜びを爆発させる受賞者達。 (筆者撮影)
贈賞式会場外の階段でも、興奮冷めやらず喜びを爆発させる受賞者達。 (筆者撮影)

インド鉄道は、インドのJRに当たる国営鉄道。そのムンバイ地区では、毎日750万人もの帰宅客で混雑する。しかしそのかなりの部分の人(なんと41%)が無賃乗車で、数が多過ぎてチケットの検札もままならず、インド鉄道は多額の損失を計上していた。

一方でインド人は宝くじが大好きで、毎年280億ドル(4兆円以上)ものお金が使われているそうだ。そこでインド鉄道は、乗車券すべてを宝くじ化した。もともとすべての乗車券には番号が振られていて、その番号で、毎日1枚に10,000ルピー(約17,000円)、毎週1枚に50,000ルピー(約85,000円)の現金が当たる。人々はこぞって乗車券を買い始め、インド鉄道は多額の損金を回収できたと言う。

Indian Railways - Lucky Yatra (case study)

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文=佐藤達郎

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