ハイブリッドワークが定着し、出社率の低下や偶発的な会話の喪失が課題となる今、オフィスの価値が見直されている。
カプセル式コーヒーのパイオニア、「ネスプレッソ」の調査では、高品質なコーヒーが出社意欲や会話、アイデア創出を促し、就職先の選択にも影響を与えることが示された。
なぜ一杯のコーヒーが、職場文化や企業の魅力を左右するのか。
カプセルコーヒー「ネスプレッソ」を展開するネスレネスプレッソ株式会社の業務用営業部部長 本嶋貴之(以下、本嶋)は、昨今のオフィス環境を取り巻く状況について「コロナ禍を経て、オフィスの在り方を再定義する企業が増えている」と話す。
ハイブリッドワークが定着するなか、多くの企業がオフィスのかたちを改めて問い直すようになった。一時は縮小や撤退が進んだが、現在は社員が集まり、生産性や創造性を高める拠点として再評価されつつある。実際、AmazonやMicrosoftをはじめとする大手企業が相次いで出社回帰を打ち出し、日本でもLINEヤフーやメルカリがオフィス重視へと方針を転換している。
オフィスが果たす役割の変化について、同部オフィスセールスマネジャーの中西栄滋(以下、中西)は次のように指摘する。
「最近では、コミュニケーションの活性化に加え、社員へのエンゲージメントを体現する場としてオフィスを捉える経営者が増えています。その結果、オフィスは単なる作業スペースではなく、カフェコーナーやリフレッシュエリア、集中ブースなど目的に応じて設計や使い方を選べる場になってきました。そうした意味で、以前に比べてオフィスの自由度は確実に広がっていると感じます」
オフィスは単なる作業場ではなく、企業文化やエンゲージメントを育む場としての役割を担うようになった。その進化を支える存在のひとつとして、オフィス内のコーヒーマシンが注目されている。
オフィスは働く場から、文化を育む場へ
同社は2024年12月、ハイブリッドワークを行うビジネスパーソンに「出社意欲に関する意識調査」を実施した。その背景について中西は「営業の現場で『コーヒーを導入したら社員の雰囲気が変わった』という声はよく耳にするが、それが一部のお客様だけの事例なのか、それとも社会全体の傾向なのかを確かめる必要があった」からだと語る。
結果、約6割が「オフィスに美味しいコーヒーや交流スペースがあることで出社意欲が高まる」と回答。さらに「職場の雰囲気がリラックスする」(59.0%)、「雑談や気軽な会話のきっかけが増える」(55.7%)など、コーヒーがコミュニケーションの質に直結する効果が明らかになった。
本嶋はこの結果を次のように分析する。
「テレワークやハイブリッドワークで直接的なコミュニケーションの機会が減ったことに加え、偶発的な交流が生まれる場がオフィス内に少なくなっています。コーヒーを囲んだ立ち話がその代わりとなり、効率や創造性を高めるファクターとして期待されているのでしょう」
事実、同社のコーヒーマシンを導入した企業からは「社員同士の距離が縮まった」「上司に気軽に相談できる場ができた」といった声が数多く寄せられているという。
また、若い世代のコーヒーに対する意識も以前とは大きく変わってきている。同社が24年7月に大企業志望の学生507名を対象に実施した「オフィスコーヒーに関する意識調査」では、6割以上が「オフィスコーヒーにこだわる企業で働きたい」と回答。カフェなどで日常的に質の高いコーヒーに親しんできた世代にとって、職場に美味しいコーヒーがあることは“当然の期待値”になっている。
こうした結果を受け、中西は「高品質なコーヒーを用意することが、社員への配慮の表れとして受け止められるケースもあります。採用活動の場でも効果があると感じています」と説明する。すでに求人広告に「『ネスプレッソ』導入済み」と明記し、職場環境の魅力をアピールする企業も出てきているという。
同社が展開するコーヒーマシンは、コーヒー豆を密封した専用カプセルをセットし、ボタンを押すだけで、誰でも安定して高品質な一杯を楽しむことができる。こうした利便性と品質の両立が、オフィスコーヒーを、社員満足度と採用力を同時に高める戦略へと押し上げている。
一流レストランと同じ味わいをオフィスで
出社意欲や職場での会話を生む背景には、単なるコーヒーではなく体験としての質の高さがある。
「高品質なコーヒーを淹れるには、豆の状態、焙煎、挽き方、抽出圧など、数多くの条件が揃っていなければなりません。それを誰でも美味しいコーヒーが淹れられるようにしたのが『ネスプレッソ』です」(本嶋)
この品質を支えているのが、高品質な豆の栽培・精製・調達、焙煎、粉砕に至るまでを一貫して管理する仕組みだ。さらに同社独自の技術が詰まったアルミニウム製のカプセルが、コーヒー豆の風味を光、酸素、湿度から守っている。
こうした仕組みによって実現された品質の高さは、世界各国のミシュランの三つ星レストランやラグジュアリーホテルにも採用されていることからもうかがえる。本嶋も「食のプロに選ばれるクオリティを、オフィスでも楽しめるのが強み」だと語る。
現在20種類以上のコーヒーが、社員一人ひとりの好みに合わせた選択肢を広げている。一杯ごとの抽出により、切り替えたい気分の時には強い味わいのコーヒーカプセルを選んだり、リラックスしたい気分の時には穏やかな味わいを選択するなど、気分に合わせた飲み方が可能に。こうした多様性が、社員同士の会話や新しいアイデアを引き出す契機となっていると中西は語る。
「『最近はこのカプセルコーヒーを気に入っている』とか『さっき飲んだあのフレーバーがおいしかった』など、ちょっとした会話からコミュニケーションが生まれるようです」(中西)
さらに、用途やスペースに応じて選べる豊富なマシンラインアップや、カフェと比べた際の一杯あたりのコストといった実務的なメリットも、導入企業が増える理由のひとつだ。
社員がコーヒーマシンを囲んで談笑する姿は、オフィスの風通しの良さを象徴している。訪れた取引先や就職活動中の学生にとっても、企業文化を感じ取るきっかけになるだろう。
サステナビリティに配慮した一杯
「ネスプレッソ」のコーヒーが支持される理由は、品質や商品のラインアップだけではない。持続可能性への取り組みも、企業から選ばれる大きな要素になっている。株主はもちろん、そこで働こうとする人材にとっても、企業がサステナビリティに配慮しているかどうかは欠かせない視点となっている。
同社は2003年に、環境保護に取り組む国際NGO、レインフォレスト・アライアンスと協同で「ネスプレッソ AAA サステナブル・クオリティ(持続可能品質)™プログラム」を発足し、高品質なコーヒー豆を将来にわたり確保すると同時に、生産者の生活向上に貢献する取り組みを推進してきた。
現在では、使用するコーヒー豆の90%以上をこのプログラムから調達している。
さらに、使用済みカプセルについても回収・リサイクルの仕組みを整備し、資源循環を通じて環境負荷の低減に努めている。
つまり、「ネスプレッソ」の導入は、社員のエンゲージメントを高める投資であると同時に、企業の価値観を表すメッセージにもなり得るのだ。
2026年、「ネスプレッソ」はブランド創立40周年を迎える。業務用営業部はコロナ禍以降も毎年2桁成長を続け、売上は19年比で倍増。
本嶋は「5年後にはさらに倍増を目指す」と意気込みを語る。
だが数字以上に同社が重視するのは、「一杯のコーヒーが人と人をつなぐ力」。コーヒーは単なる飲料ではなく、人を集め、会話を生み、社内文化を育むきっかけとなる。
「ネスプレッソ」は一杯のコーヒーを通じて、より多くの企業に大きな価値を提供しようとしている。
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もとじま・たかゆき◎ネスレネスプレッソ株式会社業務用営業部部長。2007年に入社。ホテルやレストラン向けの営業を経て、24年より現職。外食産業で培った知見を基に、法人市場でのシェア拡大を牽引
なかにし・えいじ◎ネスレネスプレッソ株式会社業務用営業部オフィスセールスマネジャー。2013年に入社後、一貫してオフィス向けの営業を担当。オフィスの変化を現場で見つめ続け、第一線で営業活動をリード。19年から現職




