私たちは2050年も今のようにコーヒーを楽しめるだろうか?

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2025年の夏、日本列島は観測史上最高レベルの暑さに見舞われ、静岡では竜巻が街を襲い、東京でも線状降水帯による川の氾濫が起きました。地球温暖化の影響はもはや「遠くの話」ではなく、日本の社会インフラや生活、そして私たちの“朝の一杯のコーヒー”にまでおよび始めています。

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ブラジルをはじめとするコーヒー生産地の温暖化は、「コーヒー存亡の危機」をもたらしています。アラビカ種のコーヒーは、18℃〜21℃の気温を好み、24℃を超えると品質が急激に低下します。少しの気温上昇が、作物に深刻な影響を与え、降雨パターンを乱し、害虫の繁殖を加速させ、生産地を脅かすのです。

このまま温暖化が進めば、2050年までにコーヒーの栽培適地が現在の半分にまで減少するとも言われています。

世界では、約1250万の小規模農家が、アジア、アメリカ、アフリカの「ビーン・ベルト」と呼ばれる熱帯地域でコーヒーを生産しています。日本も世界トップ5に入るのコーヒー消費大国として、こうした生態系と農業コミュニティに対して、非常に大きな影響力を持っています。

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世界的なコーヒー需要は今後倍増すると言われており、私たちにとって当たり前の癒しであるコーヒーが、高価で、入手しにくく、味もイマイチな贅沢品になることを避けるためには、手つかずの森林を1000万ヘクタール(日本の国土面積の4分の1以上)も切り開く事態になりかねません。そんなことが起これば、大量の炭素が放出され、生物多様性や水系、土壌の健康までもが失われてしまうでしょう。

そんな未来を避けるための道が、すでに見え始めています。アグロフォレストリーや再生型農業など、自然と共生する手法に投資することで、既存の農地の生産性を高め、生態系を守りながら、気候変動の影響を抑えることが可能です。特に、女性や先住民のような小規模農家を支援することで、生態系の回復と地域経済の強化を同時に実現することができます。

たとえば、既存の1000万ヘクタールのコーヒー農地の生産性が2〜3倍になれば、森林破壊を回避でき、15億トンものCO2排出を防ぐことも可能です。これは、日本と韓国の年間排出量の合計に匹敵します。これは単なる環境対策ではありません。国家レベルの脱炭素政策にも匹敵する、コーヒー業界にとっての戦略的な一手です。

コンサベーション・インターナショナルでは、20年以上にわたってコーヒー問題に取り組んできました。なぜなら、コーヒーは世界でも特に生物多様性が豊かで、同時に最も脆弱な生態系で育てられているからです。

コーヒー業界全体がどのようにして自然を守り、安定供給を確保し、農家・生態系・企業のすべてに利益をもたらす「ネイチャー・ポジティブな経済」を築いていけるのか──。これから、私が希望を感じている大きなアイデアをいくつかご紹介します。

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文=アメリア・ジュール

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