私たちは2050年も今のようにコーヒーを楽しめるだろうか?

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認証を超えて:コーヒー生産地の再生

今私たちが直面している課題の規模を考えると、農園ごとの認証といった単独の取り組みだけでは、もはや十分とは言えません。本当のインパクトを生み出すには、より統合的に、より協働的に、そしてよりスマートに取り組む必要があります。そこで生まれたのが、「ランドスケープ・アプローチ」です。

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たとえば、コロンビアのウィラ県では、政府、市民社会、スターバックスのような企業が、ウォルマート財団やHP財団の支援を受けながら連携しています。目的は、生態系の再生と包摂的な地域開発の実現です。

このアプローチは、個別の農園に焦点を当てた従来のプログラムとは異なり、「環境・社会的課題は、農園の境界を越えて存在する」という現実を前提としています。もちろん、認証制度は新たな市場へのアクセスや価格向上、農法改善などのメリットを農家にもたらしてきました。しかし多くは固定的な基準に基づいており、持続可能性のような複雑で相互につながった課題には対応しきれないという限界もあります。

たとえば、ある認証農園が農薬使用を削減していたとしても、隣接する農園が森林を伐採したり、同じ流域を汚染していたら、地域全体としての恩恵は打ち消されてしまいます。

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コロンビアのウィラ県(c)Conservation International/photo by Starry Sprenkle-Hyppolite
コロンビアのウィラ県(c)Conservation International/photo by Starry Sprenkle-Hyppolite

ウィラ県のモデルは、こうした現実に真正面から向き合い、15の自治体において、78万ヘクタールを超えるコーヒー生産地を対象に、土壌の再生・森林破壊の抑制・気候レジリエンスの構築を進めています。

さらにこの変革を支えるため、私たちコンサベーション・インターナショナルとそのパートナーは、「サプライシェッド・モデル」と呼ばれる新たなアプローチを試験的に導入しています。これは、個別の農園ではなく、地域全体を“共通の調達エリア”として定義し、企業が協働で、気候・自然・地域コミュニティへの成果を目指して投資できるようにする仕組みです。

最近行われたカーボンフットプリント調査では、コーヒー生産における温室効果ガス排出の基準値を設定し、進捗の可視化や科学的根拠に基づいた企業目標の達成を支援しています。

ウィラ県のモデルは、正確なデータ、包括的なパートナーシップ、そしてシステム思考が揃えば、コーヒー生産地は単に「豆をつくる場」を超え、地球環境を回復させ、地域社会と企業の双方に価値を生み出す存在になりうることを示しています。

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文=アメリア・ジュール

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