現実と虚構、過去と未来、フィクションとノンフィクションといった二項対立を越え、いかにコンテンツや表現、事業を展開するのか。
新しい都市体験の研究開発チーム「TOKYO NODE LAB」がForbes JAPANの世界を変える30歳未満を選出する「30 UNDER 30」と組み、様々な分野を越境しながら未来の都市を思索するトークセッションを6月に実施した。登壇したのは、孤独などをテーマに詩や映像作品、展示会の企画などを行うアーティストの布施琳太郎、ドキュメンタリーの手法を取り入れたフィクション「フェイクドキュメンタリー」の映像作品や展示「恐怖心展」などを手掛けるテレビ東京プロデューサーの大森時生、微生物多様性を軸に都市デザインを行うバイオテックBIOTA代表取締役の伊藤光平だ。
30 UNDER 30の受賞者であり、アーティスト、テレビプロデューサー、スタートアップという異なるコンテクストを持つ3人をゲストに迎え、「メディアを超える」と「嘘と本当、ストーリーとナラティブ」、「展覧会」、「5年後の都市体験」をテーマに、クロストークが展開された。
<登壇者>
・布施琳太郎(アーティスト)
・大森時生(テレビ東京 プロデューサー)
・伊藤光平(BIOTA 代表取締役)
・ファシリテーター:茂谷一輝(TOKYO NODE LAB)
表現の場である「メディア」の横断と越境
茂谷一輝(以下、茂谷):3人とも拠点となるメディアがありながら、メディアを横断したり、越境されたりしています。まずは「メディアを超える」とき、独自に考えていることや気を付けていることがあれば教えてください。
布施琳太郎(以下、布施):僕が大事にしているのは、「この作品は私のために作られたものなのではないか」という、鑑賞者側に思い込みにも近い、精神的なコミットメントを生み出すことです。
「自分のことが表現されている」「自分のためにこの作品がある」と感じたときこそが、最も感動する瞬間とも言えます。そのため、最近はよりわかりやすく感動できるよう、泣いてほしいポイントを考えたりもします。
例えば、今年2月に葛西臨海公園で開催したツアー型展覧会「パビリオン・ゼロ:空の水族園」では、参加者が最後は船の甲板に出て、目の前に海が広がる中で東京大空襲の瓦礫でできた埋立地を目の当たりにする仕掛けを作りました。
その景色を伝えきるために、参加者にはまずVRを装着してもらい、甲板に出るときにそのVRを外して肉眼で景色を見てもらうことが、一番効果的ではないかと考えました。
茂谷: VRを外さないといけない瞬間を作ろうと。
布施:「肉眼でこの世界を見ている」と感じてもらうために、VRを装着してもらおうという考え方ですね。
茂谷:なるほど。大森さんはいかがですか。



