私は最近、コーチングのクライアントと話していて、彼女の仕事に関する興味深い話を聞いた。
そのクライアントのニコール(仮名)は突然、シニアディレクターというマネージャー職に昇進した。しかし、彼女にはマネジメントやリーダーシップの経験も、それに備えた研修を受けたことも一切なかった。
もちろん、上司は善意で彼女を昇進させた。彼女の潜在能力を信じ、それを新しいポジションでも発揮できると考えたのだ。しかし、実際には彼女は苦戦していた。
だが、この状況はニコールだけに限られたことではないし、新しいことでもない。会社組織では何年も前から繰り返し見られてきた現象である。
2018年に世界経済フォーラムが実施した調査は、マネジメントに昇進した約1500人の営業担当者を分析した。その結果、営業担当として高い成果を上げた人ほど昇進する可能性が高いことが確認された。
しかし同時に、彼らがマネジメント職に就くと、チームの営業成績が平均で約7.5%低下することが明らかになった。逆に、協働の経験とスキルを持つプロフェッショナルは、たとえ個人的な営業成績が低くても優れたマネージャーとなり、チーム全体の成果を引き上げた。これは、個人の業績だけに基づいて昇進させることが組織に害を与えることを示している。
同じ年、テキサス大学オースティン校マコームズ経営大学院の研究でも、個人的な高い成果に基づいて昇進した者ほど、最悪のマネージャーになる傾向が確認された。そうしたマネージャーの成果は他の比べて28%低く、利益は33%少なかった。これは「ピーターの法則」として知られている。



