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2025.09.30 07:15

低アルコール度数の日本酒は吟醸香が強い。高度数ほど香らない理由を月桂冠が解明

Getty Images

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日本酒特有のフルーティーな吟醸香は、アルコールの度数が高くなるほど感じにくくなることがわかった。そこには、日本酒の匂い成分と、人が匂いを感じる嗅覚受容体と、アルコールの関係性がある。

日本酒の吟醸香は、カプロン酸エチルと酢酸イソアミルという2つの香気成分で構成されている。カプロン酸エチルはリンゴやパイナップルのような甘酸っぱい香りに、酢酸イソアミルはバナナやメロンの香りに例えられる。そんな吟醸香について研究を重ねてきた月桂冠総合研究所は、静岡県立大学の伊藤圭祐准教授らと共同研究を行い、アルコール度数と吟醸香との関係を明らかにした。

まずは、お酒を飲んだときの印象を調べる官能評価試験を行った。香り成分はまったく同じでアルコール度数だけが違う酒を実験参加者に飲んでもらい感想を聞くと、アルコールの度数が低いほど、カプロン酸エチルと酢酸イソアミルのどちらの香りも強く感じられるようになることがわかった。

また酢酸イソアミルは、アルコール度数が低いとクリアに香り、高くなると「熟れた果実」のような印象が強まった。カプロン酸エチルは、アルコール度数が変わっても大きな変化はなかった。

次に、鼻腔の奥にある嗅覚受容体の検査も行った。すると、アルコールが受容体の応答を阻害することが確認された。つまり、アルコールによって香り成分が受容体に結合しにくくなり、香りを感じにくくなるということだ。これは同研究チームによる初の発見とのこと。とくに酢酸イソアミルのほうが阻害されやすい。その阻害の程度の差が、2つの香り成分の性質の違いを生み出している可能性があるという。

この研究成果を受けて、月桂冠は、商品開発での「アルコール度数に応じた香りの設計」につながると話している。日本酒通のみなさんも、低アルコールとばかにしないで、試す価値は十分にありそうだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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