音楽

2025.10.02 08:30

YOASOBIの生みの親、山本秀哉がつくる発信基地「Echoes」

山本秀哉|Echoes プロデューサー

山本秀哉|Echoes プロデューサー

2025年9月25日発売のForbes JAPAN11月号は、文化の力で世界を駆ける「カルチャープレナー」たちを特集。文化やクリエイティブ領域の活動によって新ビジネスを展開し、豊かな世界を実現しようと試みる若き文化起業家を30人選出する企画で、今回で3回目となる。これまでの受賞者は、茶人の精神性を軸にお茶事業を世界に拡大し続けるTeaRoomの岩本涼や、盆栽プロデュースでラグジュアリーブランドともコラボする「TRADMAN’S BONSAI」の小島鉄平、障害のある「異彩作家」たちが生み出すア ートを軸にビジネスを展開するヘラルボニー(松田崇弥、松田文登)などがいる。

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今回も、映画『国宝』で吾妻徳陽として所作指導を担当した歌舞伎俳優の中村壱太郎など、プロデューサーやコネクターを含む多彩な顔ぶれが揃った。伝統からアニメやAIまで、日本経済の未来を照らす「文化の底力」を感じてほしい。

YOASOBIやMAISONdesからキャラクターまでが集うマネジメント&レーベルEchoes。立ち上げメンバーのひとりの山本秀哉は、いかにしてJ-POPを世界に届けるのか。


「共鳴するアーティストの発掘」を目的にソニー・ミュージックエンタテインメントが2024年に発足したマネジメント&レーベルEchoes。YOASOBIやMAISONdesを手がけたスタッフらが設立したレーベルで、この2組も移籍を発表した。新世代の才能と呼応し合う“音の発信基地”として、急速に存在感を拡大している。

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Echoesのプロデューサー陣の中核を担うのが、山本秀哉。ソニーミュージックグループでA&Rを担当していた山本は、19年に同期で「monogatary.com」のスタッフだった屋代陽平に誘われ、小説を音楽化する企画を共同で立ち上げた。そのなかで誕生したのがYOASOBIだ。デビュー曲「夜に駆ける」でボーカロイド文化の影響を受けたサウンドが注目を集め、公開から約1年でYouTube再生数1億回を突破。その後も音楽と複数のメディアをかけ合わせた越境的なタイアップを次々と成功させ、日本楽曲歴代最高となるストリーミング再生12億回を突破した。

2019年にデビューしたコンポーザーのAyaseとボーカルのikuraからなるユニットYOASOBI。
2019年にデビューしたコンポーザーのAyaseとボーカルのikuraからなるユニットYOASOBI。

「アーティストの長い人生を考えれば、消費され過ぎも良くない。楽曲のヒットと、アーティストの価値向上は別。プロデューサーはひとりのリスナーとしてのフラットな視点と、長く愛されるブランディングへの冷静な判断力をもつべきだと思う」

そう語る山本は、プロモーションにおいてもファンの反応やUGC(ユーザー生成コンテンツ)の動向を収集し、それに沿った事後的な展開を重視する。例えば20年にリリースされたYOASOBIの「群青」は、高校生ダンス部の特集番組や甲子園の入場行進曲で取り上げられたことを契機に、YouTubeでダンス動画が急増。21年には「NHK紅白歌合戦」での大規模なダンス&合唱企画へと結実した。

23年にはアニメ『【推しの子】』の主題歌「アイドル」がBillboard Global 200で7位を記録。世界のリスナーを獲得するきっかけとなった。山本は「海外進出の明確な成功法はない」と言いつつも、YOASOBIの場合はこれまで日本が築いてきた“日本産ブランド”への親しみが後押しになったのではと振り返る。アニメを通して潜在的な海外のJ-POP需要にうまくはまった。

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文=フガクラ 写真=若原瑞昌

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