ウクライナ侵攻は、ロシアに大きな代償を強いている。推計によると、ロシア軍の死者は25万人を超え、負傷者数と合わせると100万人に達している。ロシアが2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始してからの死者数は、アフガニスタン、チェチェン、シリア、ウクライナ東部での最初の紛争を含む、第二次世界大戦以降のすべての戦争で犠牲になった死者数の合計を上回る。
こうした甚大な犠牲の裏で、ロシアは2022年以降、ウクライナ領土の12%に当たる約7万5000平方キロを獲得した。つまり、ロシアは獲得した1平方キロごとに26人の兵士を失ったことになる。ロシアでは24年後半以降、兵力不足が深刻化しており、北朝鮮の兵士を含む外国人戦闘員にまで頼らざるを得ない状況に陥っている。
ロシア軍にとって、兵士の採用は長年の課題となってきた。軍隊では新兵が劣悪な環境、いじめや嫌がらせ、医療・栄養の不足に直面し、訓練も十分に行われない。市民の暴動を防ぐため、ロシア政府は主要都市からの徴兵を避け、代わりにバシコルトスタンやチェチェン、ヤクーチヤ、ダゲスタンといった国内の貧しい辺境地域から新兵を募っている。ロシアの兵役制度は常に質より量を重視してきたため、ウクライナ侵攻に必要な兵員を確保するのに苦戦している。
通常戦術でウクライナとの戦争に勝利できなかったことを受け、ロシアは2022年秋に長距離無人機(ドローン)の使用を開始した。それ以来、同国では無人機の製造が加速し、ロシア軍は一晩で1000機以上の無人機を発射できるようになった。ロシアの無人機は強力な攻撃力を有し、ウクライナ側の死傷者の実に60~70%がロシアの無人機によるものだ。
これにより、ロシア軍では兵士の募集や訓練の必要性が低下し、現在では無人機操縦士の訓練に重点が置かれるようになった。ロシアは2030年までに歩兵の数を上回る、100万人以上の無人機操縦士を養成する目標を掲げている。
欧州を標的にし始めたロシアの無人機
ロシアにとって、無人機はウクライナ侵攻を助ける天の恵みであるだけでなく、西側諸国を不安定化させ、混乱させるためのハイブリッド戦争の手段でもある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はここ数週間で、ポーランド、ルーマニア、エストニアを含む複数の北大西洋条約機構(NATO)加盟国の領空を侵犯し、こうした行為がどこまで許容されるのかを試している。



