米連邦政府機関の一般調達局(GSA)が、政府効率化省(DOGE)によって解雇された数百人の職員に職場復帰を求めていることがわかった。AP通信が報じた。イーロン・マスクが大なたを振るった連邦職員の人員削減が撤回された最新事例となる。
AP通信が入手した内部メモによると、連邦政府の建物や不動産のリースを管理するGSAは、再雇用した職員に対し今週中に復職の受諾または辞退の意思を伝え、10月6日までに職場に復帰するよう求めている。
AP通信は匿名の連邦当局者の話として、DOGEはGSAに対して79%の人員削減を行い、特にポートフォリオマネージャーを65%、施設管理者を35%削減したと伝えている。
マスク指揮下のDOGEは複数の政府機関向けのリース契約も解除したが、数百件に及ぶこの決定も今回取り消された。
DOGEによって解雇された職員の復職は、内国歳入庁(IRS)、労働省、国立公園局(NPS)などに次ぐ動きだ。
AP通信はGSAの元職員チャド・ベッカーの話として、DOGEによる連邦政府のリース契約解除によって節約できる支出額は、当初の4億6000万ドル(約680億円)から1億4000万ドル(約208億円)に減少するとの見通しを伝えた。
GSAを監督する米下院運輸・インフラ委員会のグレッグ・スタントン議員(民主党・アリゾナ州選出)はAP通信に対し、DOGEの人員削減やリース契約解除について「高い代償を伴う混乱を生み出し、納税者が依存しているサービスそのものを損なった」と批判。コストカット策が「何らかの節約につながった」証拠はないと付け加えた。
DOGEが解雇した職員を再雇用した政府機関には他にも、食品医薬品局(FDA)、農務省、国家核安全保障局(NNSA)などがある。
米紙ワシントン・ポストの報道によると、日本の国税局に相当するIRSは先月、DOGEの退職勧奨に応じた職員の一部に職場復帰を要請した。職員宛ての内部メールには「人員削減によってミッションクリティカルな専門知識にギャップが生じる恐れのある分野を特定した」と記されていた。
農務省は鳥インフルエンザの拡大を受けて、対応要員として一部職員を呼び戻した。ブルームバーグによれば、エネルギー省は核兵器の専門家を再雇用し、労働省は退職勧奨に応じた職員を数カ月の有給休暇後に再雇用した。NPSも少なくとも50人を迅速に復職させたとAP通信が先に報じている。
DOGEの退職勧奨は、勤務終了後も数カ月分の給与を支払うという内容で、解雇されたのちに復職を求められた連邦職員の多くはこれに該当している。この退職制度により一部の政府機関では、削減された人員でサービスを維持することに困難が生じた一方、納税者の負担は増大した。
また、AP通信によればGSAでは、DOGEがリース契約を解除した物件を借りている政府機関が明け渡さなかった場合、物件所有者が請求する手数料の支払いが必要となり、そのための費用がかさんでいた。DOGEが削減対象としたリース契約のうち480件以上が実際には継続されたままだったという。
DOGEは政府職員の解雇をめぐって複数の訴訟や議員・支援団体からの批判に直面している。
新規採用で人員削減の穴埋めを進めている政府機関もある。米国立気象局(NWS)は、560人以上の職員が解雇または早期退職となったのち、ハリケーンシーズンに備えて125人前後の気象予報士を新たに採用した。またNPSは季節雇用職員を当初計画より約3000人多く追加採用した。



