越境交通のボトルネック
国際インバウンド旅行協会(IITA)によると、2024年にカナダ人旅行者が最も訪れた米国の州は、ニューヨーク州(310万人)、ワシントン州(120万人)、フロリダ州(98万4000人)、ミシガン州(67万8000人)、メーン州(63万9000人)だった。
注目すべきは、このうち3州(ニューヨーク、ワシントン、ミシガン)がカナダと国境を接している点だ。これは他州よりもカナダ人観光客の短距離旅行に経済的に依存している可能性を示している。
カナダと国境を接する州は全米に13州あり、双方の住民は119カ所の国境検問所を行き来して隣国を訪れることができる。しかし、陸路の越境交通量のほとんどは、オンタリオ州とニューヨーク州の間にあるバッファロー・ナイアガラフォールズ、オンタリオ州とミシガン州の間にあるデトロイト、ブリティッシュコロンビア州とワシントン州の間にあるブレインの3カ所の国境検問所に集中しており、米運輸統計局によれば、これら3地点だけで国境をまたいだ自動車旅行の約9割を占めている。
その次に交通量の多いミシガン州ポートヒューロンとニューヨーク州シャンプレーン・ラウゼス・ポイントの検問所は、それぞれ7%しか占めていない。残る114地点の国境の交通量はごくわずかにとどまる。
ニューヨーク州の逸失収入は推定800億円超
ニューヨーク州には、交通量の多い2つの国境検問所(バッファロー・ナイアガラフォールズとシャンプレーン・ラウゼス・ポイント)があるため、カナダ人の観光消費に左右されやすい。
2024年、ニューヨーク州には延べ3億1540万人の旅行者が訪れ、940億ドル(約14兆円)の消費を生み出し、経済効果は総額17億ドル(約21兆6000億円)に達した。このうちカナダ人旅行者の消費額は17億ドル(約2530億円)だった。
現時点で2025年夏の公式データはないが、カナダからの越境旅行が3分の1減少したことを踏まえると、ニューヨーク州はカナダ人の直接消費額のみで5億6000万ドル(約834億円)以上の観光収入を失ったと考えられる。
ミシガン州は1500億円の観光需要を喪失か
やはり交通量の多い国境検問所を2つ(デトロイト・ウィンザーとポートヒューロン・サーニア)抱え、五大湖に面しているミシガン州は、さらに大きな影響を受けているとみられる。
2024年、ミシガン州には延べ1億3120万人の旅行者が訪れ、307億ドル(約4兆5700億円)の消費をもたらし、総額548億ドル(約8兆1600億円)の経済効果を生んだ。
観光消費の大半は国内旅行者によるものだが、外国人旅行者市場は州の観光需要の5.1%を占めており、約670万人の外国人客が15億6000万ドル(約2320億円)を消費し、経済効果は総額27億9000万ドル(約4150億円)に上った。
こちらも2025年夏の公式データはまだないが、越境旅行者が3分の1減少した事実を考慮すれば、ミシガン州は旅行者220万人と5億1500万ドル(約767億円)の直接観光消費を失い、総額10億ドル(約1490億円)近い経済損失を被った可能性がある。


